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めぐり逢いのtjZeroのレビュー・感想・評価

めぐり逢い(1957年製作の映画)
3.6
大西洋を横断し、N.Y.へ向かう豪華客船内。
互いに婚約者がいながら、恋におちてしまったニッキー👨(ケイリー・グラント)とテリー👩(デボラ・カー)は、半年後にエンパイア・ステート・ビルの屋上で再会することを約束するのだが…。

トム・ハンクス&メグ・ライアンの『めぐり逢えたら』(’97年作)のオリジナル版。
…なんだけど、エンパイア・ステート屋上でのすれ違いのシチュエーション以外はほぼ別物といっていいくらいの内容。

こちらは製作された時代(’57年)もあって大メロドラマなんだけど、設定は結構シビア。
ニッキー👨は画家をあきらめたプレイボーイで、資産家の娘と結婚間近。
テリー👩はクラブの歌手で実業家に見初められ、こちらも結婚を視野に入れている。

つまり、このふたり👨👩が結ばれるには、パトロン(経済的援助)をそれぞれが捨てて、好きな芸術(👨は絵、👩は歌)で食っていけるのか⁈…というシビアな現実が立ちはだかっている。

なので本作のテイストは、『めぐり逢えたら』よりも『ラ・ラ・ランド』に近い。
シビアな現実があればこそ、メロドラマ部分の”甘さ”がいっそう際立って味わい深くなるともいえる。
20世紀の『めぐり逢い』は、その甘いメロドラマ部分もなんとか現実の物語としても成立する余地があった。
21世紀の『ラ・ラ・ランド』では、そんな”甘さ”はミュージカルの妄想部分に押し込まれ、ドライな現実を照らし出していた。

『~ランド』からさらに数年経過したアフター・コロナの現代では、さらにドライ&シビアな日常になっていくのかも。
これだけスマホが行き渡っちゃうと、デートの待ち合わせでのすれ違い、なんていうハプニングはまず起こらない。
”不測の事態”を避けるために映画館も、美術館も、レストランも、事前に予約しないと楽しめないトコロが多くなってきている。
そのうち恋愛も、ウーバーイーツみたいに事前に予約してデリバリーしてもらう形態になったりして…。

ハプニングが起こりづらい、管理された世の中だとメロドラマはますます”絵空事”になっていく。
本作のような前世紀の恋愛映画は、令和生まれの若者にはファンタジーに見えちゃうようになるのかもしれない。
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