カタパルトスープレックス

独立愚連隊のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

独立愚連隊(1959年製作の映画)
4.3
日本屈指のエンターテイナー岡本喜八監督の出世作。この映画は本質的にはサスペンス映画です。西部劇にインスパイアされていますが、決闘の映画でも戦争映画でもありません。ヒッチコック映画のようなサスペンスです。いまとなってはタイトルの『独立愚連隊』でちょっと損しているかもしれません。

舞台は第二次世界大戦末期の中国の北支戦線です。登場人物は従軍記者と身分を偽る脱走兵の荒木(本名:大久保)です。荒木(大久保)には弟がいて恋人の中国人女性と心中します。しかし、荒木(大久保)にはそれが信じられないため、北京の陸軍病院に入院中に脱走して事件現場に身分を偽り赴きます。弟の死の真相とは?

危険な最前線で身分を偽り真相を突き止めなければいけないというかなりハラハラのシチュエーションが見事です。しかも、大久保を追って従軍看護婦をしていたトミ(雪村いづみ)と再会してしまいます。なんとトミは大久保を追って最前線で従軍慰安婦となっていました。当時アイドルの雪村いづみが従軍慰安婦ですよ!大久保は真相を追って、弟が死んだ現場である独立愚連隊の駐屯地まで赴きます。しかも、トミもついてきてしまいます。もう!ただでさえマズい状態なのに、トミも心配です!この頃の雪村いづみは超かわいい!

1959年公開作品なので、すでに60年以上前の作品です。それでもサスペンスとして経年劣化なしに今でもハラハラドキドキできます。戦争を美化するわけでもなく、反戦メッセージを強調するわけでもなく。単に戦場は舞台になっているだけだからなんでしょうね。

この映画が凄いのは俳優がかなりちゃんと中国語を話すことです。主役の佐藤允も客演の鶴田浩二もちゃんと中国語を話している!しかも、中国人を下に見下ろした描き方をしていなくて、ちゃんと対等の人間であり軍隊組織として描いています。事件は日本人組織の中で起こっているため、戦争の相手である中国の国民党軍は悪役ではないからです。これ、今の中国で上映しても大丈夫だと思いますよ。