LocDog

ラスト・アクション・ヒーローのLocDogのレビュー・感想・評価

4.0
「ビッグミステイクだ」


シュワルツネッガーがシュワルツネッガーを演じるセルフパロディ映画だ。

ゴールデンラズベリー賞を6つ、スティンカーズ最悪映画賞も2つ獲得した素晴らしい映画である。

なぜこんなに名誉ある賞をたくさん受賞できたのか?

作品の出来についてもいろいろ言われているのだろうが、多くは費用のやりくりのまずさではないだろうか。

間違いなく大ヒットすると踏んだ制作側はプロモーションに多額の費用をかけ、NASAの無人ロケットにタイトルを記載して打ち上げたり、高さ23メートル、アントニオ猪木に換算すれば12人にも及ぶ巨大なシュワルツネッガーのバルーン人形を作り巡回させていたりしたという。

そして最終的には制作費、プロモーション費あわせて1億ドル以上になり、おおこけしてしまった。

当然、賞を獲得するのも納得であった。

が、いまみてみるとどうだろう。

虚構世界と現実世界を交差させるメタフィクションのつくりは、他の作品でウケているではないか。

それに映画の中から映画スターが飛び出すといったのはまさに、ウディ・アレンの「カイロの紫のバラ」だ。

ウディ・アレンのように切なさや、大人の香りは一ミリもないが、子供がおもわず画面に夢中になってしまいそうなワクワクする展開はわるくないじゃないか。

が、冷静になるとやはりちょっとノレないというのも事実だ。

当時、対抗馬に「ジュラシックパーク」があったが、まだ見ぬ映像体験は大人も子供もさぞ興奮しただろう。

一方本作は、子供は熱中しただろうがおとなになってコロコロコミックをみるというのは気が引けるといった感覚が多少ある。

また批判するものの意見には、「コマンドーやプレデターのようなおとなの男が楽しめるような激しいアクションがみたい」という声も聞く。

たしかに本作は全年齢を対象とするために過激な発言を避け、暴力描写もマイルドにしている。

だがシュワちゃんは自身の初監督で「キッチン・ウォーズ/彼女の恋は五ツ星」という子供がみれるコメディ作品を撮っており、誰よりも子供が喜ぶ姿が大事なのだ。

ユーザーの求めるシュワちゃんと、シュワちゃんが求めたシュワちゃんが大きくずれてしまったことがまさに”ビッグミステイク”であったのかもしれない。
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