「犯罪王リコ」(1930)で大ブレイクしたE・G・ロビンソン×マーヴィン・ルロイ監督のタッグが次に放った隠れた傑作。新聞報道のモラル告発映画の先駆作。名助演女優アリーン・マクマホンの映画デビュー作。原作はブロードウエイの大ヒット戯曲「Five Star Final」(1930)※新聞の「当日最終版」の意味。
スキャンダル新聞ガゼット紙の編集長ランダル(E・G・ロビンソン)は金の為に割り切って仕事に従事していた。売り上げが落ちていることを憂慮した社主ヒンチクリフは、20年前に若い女性ナンシーが恋人を射殺した事件を蒸し返して話題にすることをランダルに命ずる。部下の悪徳記者イソポッド(ボリス・カーロフ)は牧師に扮し、現在は一般人として暮らすナンシーのプライバシーを探り回る。ナンシーは娘の結婚式を明日に控えていた。。。
プレコード期を象徴するようなショッキングなプロットとストレートな批判が込められた社会派映画、最初の20分ほどはローペースだが、その後一気に話が転がりだす。モラルなき新聞報道が引き起こす取返しのつかない悲劇。遺された娘と罪を背負った編集長の悲痛な訴えが胸に刺ささった。
新聞報道の暴走は同年の「犯罪都市(The Front Page)」(1931)でも揶揄されていて、この頃から社会問題化していたようだ。その後も同作のリメイク「ヒズ・ガール・フライデー」(1940)、サイ・エンドフィールド監督「アンダーワールド・ストーリー」(1950)、ビリー・ワイルダー監督「地獄の英雄」(1951)など、繰り返し同様テーマの映画が作られ現在に至っている。
このところ日本のマスコミはホワイト化が進んでいるが、それ以上にやっかいなのが新メディア=SNSであることは周知。いわば口コミの噂話が大手を振って歩いている状態なので危険極まりない。本作の強度ある問題提起は現代でも充分有効である。
E・G・ロビンソンの演技はベスト級。「フランケンシュタイン」(1931)でのブレイク直前のボリス・カーロフ、「飢ゆるアメリカ」(1933)での名演ぶりを既に発揮するアリーン・マクマホンなど、脇役陣も充実した知られざる傑作。
※電話交換手を演じたポリー・ウォルターズは、翌年の「狂乱のアメリカ」(1932)でも同じ役で存在感を発揮。他にも二本以上で電話交換手を演じているが殆どがノークレジット。