シズヲ

座頭市御用旅のシズヲのレビュー・感想・評価

座頭市御用旅(1972年製作の映画)
4.0
ちょっと変わった雰囲気の座頭市。オープニングから浪曲が頻繁に用いられ、更にはいかにも現代的なハードボイルド系のBGMが流れたりと珍しい演出が盛り込まれている。ちょっと慣れないけど、なかなか新鮮で悪くない。乾いた雰囲気に溢れた映像も実に渋くて堪らない。

ストーリーは安定して面白い。目明かしの親子、拾い子の家族といった別々の軸がバランスよく話に絡んでいる。悪役として関わる三國連太郎も淡々とした冷徹な演技が素晴らしい。展開の割に市さんの哀愁はちょっと物足りなかったけど、その分ヤクザとしての凄味を滲み出す場面が多かったので十分クールだ。

凄惨な拷問シーンは強烈だし、終盤の殺陣もインパクト抜群。浪曲が鳴り響く中での居合、獅子舞の市さん、炎をバックに仕込み杖を構える市さん……これだけでも秀逸なのに、その後の浪人との一騎打ちは更に凄まじい。最高に洗練された一瞬の決着にただただ痺れるばかり。浪人自体はぶっちゃけ存在の必要性を殆ど感じない立ち位置だったけど、ラストの圧倒的なセンスだけでもう全部許せちゃうのだなあ。
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