逃げるし恥だし役立たず

L.A.コンフィデンシャルの逃げるし恥だし役立たずのレビュー・感想・評価

L.A.コンフィデンシャル(1997年製作の映画)
4.0
明るい光と血なまぐさい影が交錯する50年代の米国ロサンゼルスを舞台に、組織の退廃と信念を貫く三人の男達の激情のぶつかり合いをハードボイルドに描いた作家ジェームズ・エルロイ著「L.A.4部作」の一つを映画化したクライムサスペンス。秀作。
ダウンタウンのカフェで元刑事を含む6人の男女が惨殺される銃撃事件の捜査で、三人の刑事達は互いに衝突しながらも次第に協力して、警察内部の汚職に立ち向かうストーリー。正義感が強いが成果第一で暴力や捏造に走るラッセル・クロウ(バド)、華やかなスター刑事だがマスコミと癒着するケビン・スペイシー(ジャック)、野心家で密告や裏取引も厭わない若手刑事ガイ・ピアース(エド)の其々の役者達の名演は勿論の事、華やかな映像に主人公達の人間関係や台詞回しから50年代のハードボイルドな雰囲気を見事に演出。前半のダニー・デヴィート(シド)のナレーションで進む娯楽作品の趣から転調、絶対的な正義が存在しない中で、主役級の三人に加え悪役や脇役達の様々な価値観の相違が浮き彫りになり衝突していくストーリー展開も素晴らしく、非常に優れたエンターティメント作品である。スクリーンに真っ赤な口紅が映えるキム・ベイシンガー(リン)の存在も効いていて、彼女がいなければ只々男臭いだけの映画になっていただろう。
撮影当時はノアール作品にとって冬の時代のため十分な予算を得られず、また上映時期が『タイタニック』と重なったりと踏んだり蹴ったり、難解なストーリーが仇になったのか評価の割に人気はイマイチ。個人的には強くお薦めしたい作品の一つなのだが…
ラッセル・クロウとケビン・スペイシーの見分けがつかないので御注意を…