うえの

探偵はBARにいるのうえののレビュー・感想・評価

探偵はBARにいる(2011年製作の映画)
3.9
札幌ススキノにて探偵兼便利屋としてのらりくらり暮らす俺。
その相棒で空手の達人、高田。
コンドウキョウコなる謎の人物からの1本の電話から始まる札幌の裏社会を巻き込んだ危険な仕事に挑んだ2人を描いた、10年代の邦画を代表する(といっても過言ではない)バディムービー第1作目。

人口190万、アジア最北の大歓楽街、札幌ススキノ。
ここは俺の街。
俺はこの街のプライベートアイ。
そう、探偵だ。

冒頭、最高にクールなモノローグをバックにススキノを颯爽と歩く探偵の俺を演じるは北海道の大スター(らしい笑)大泉洋。
長年演じ続けてきたコミックリリーフなキャラクターを活かしつつ、渋みと哀愁の漂う新境地な演技で彼の代表作とも言えるハマリ役を見せる。

その相棒としてグータラな農大の助手で車の免許を持たない探偵の運転手として連れ回される高田役に松田龍平。
完全にいつも通りな松田龍平ながらまさかの空手の達人という設定笑。
激しいアクションをあの松田龍平にさせる邦画きっての無茶を成し遂げ、彼もまた新境地を覗かせる新たなハマリ役を披露する。

ほぼこの2人が並んでる画だけで最高な作品。
その2人をサポートする仲間として、新聞記者でバイの松尾に田口トモロヲ、札幌を牛耳るヤクザ桐原組の若頭の相田に松重豊、探偵行きつけのカフェ「モンデ」の看板娘の峰子に安藤玉恵などなど。
今後のシリーズでも活躍を見せる面々が強烈な個性を残していく点も魅力的。

年齢制限も設けている為、内容は少し過激。
容赦のない暴力描写やススキノらしいムフフなシーンも盛りだくさん。
しかしそれらを中和する大泉洋と松田龍平のポップな存在感とハードボイルドの佇まいが絶妙なバランス。
物語終盤ボロ雑巾のようにリンチにされる探偵の無力さとやるせなさにどうしようもない気持ちを感じたし、その後の回復の過程が仲間内のくだらなさと優しさに溢れたもので笑えた。
その後反撃を目論む探偵を前にして
「1人っきりの友達をなくしたくない」
と言って探偵を止めようとする高田もかなり良かった。

毎回依頼人からの依頼で始まる事件を描くシリーズのようだが、その依頼人が毎回美女笑。
今回はコンドウキョウコ改め小雪からの依頼で物語は始まる。
複数の事件や花岡組なるヤクザが複雑に絡み合った捜査の中で次第にコンドウキョウコに惹かれていく探偵。
命に危機に何度も晒されながら事件の真相を追った探偵の切なすぎる、悲しすぎる最後。
シリーズ1作目にしてはかなり重めのバッドエンドが鑑賞後、尾を引くこと間違い無し。

とにもかくにもカッコ悪くてカッコ良い大泉洋とやたら動き回る松田龍平が観ることのできる稀有なシリーズ。
探偵だが個人的には和製007的な感じだと思っている。毎回ボンドガール的な人物も登場するし笑。
末長く続いて欲しいシリーズである。

2015年08月29日(土)1回目
2017年12月09日(土)2回目
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