安堵霊タラコフスキー

ほら男爵の冒険の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

ほら男爵の冒険(1961年製作の映画)
4.9
狂気のクロニクルを見たとき、素晴らしいと思いつつカレル・ゼマンのベストではないことがわかっていたのだけど、それは直前にこの映画の予告を見てしまっていたから

月面着陸した男がシラノ・ド・ベルジュラックやミュンヒハウゼン男爵らと出会う場面から心を掴まれてしょうがなかったのだけど、以降もその男爵と月の男の冒険が実写とアニメを見事に融合させた画期的技法で綴られ、見ている間終始胸がときめきっぱなしだった

この映画におけるモノクロを着色した映像もサイレントコメディ的破茶滅茶さも絢爛かつ奇怪な美術の数々も、どれも良い意味で毳毳しく視覚的強烈さに富んだものであるけど、そこには同じミュンヒハウゼン男爵の映画を撮ったメリエスに対する多大な敬意が容易に読み取れ、ただ面白いだけでなく映画の原典リスペクトという思いが込められた様を見ると胸が熱くもなる

という具合に色んな意味で好みに合致した映画だったけど、メリエスオマージュのこの作品を更にオマージュしたテリー・ギリアムのバロン、昔見たときはピンとこなかったけど今見ると感じ入るものが結構あるかもしれない