♪ 游ぐサカナ 游がないサカナ
游げるサカナ 游げないサカナ
映画界の鉄板三本柱。
それは裁判、脱獄、潜水艦じゃないでしょうか。調理の手順さえ間違わなければ、比較的容易に面白くなる“素材”だと思います。
そして、本作の題材は邦題の如く『アルカトラズ島からの脱出』。かつては難攻不落の要塞であり、今は脱獄不能の刑務所から脱獄する物語。もうその時点で期待値が上昇するのも当然ですよね。
しかも、その期待に応えるように登場する主人公。演じるはクリント・イーストウッド。撮影時は48歳。いやぁ。シブいですねえ。眼光鋭く、落ち着き払った中に“揺るぎない信念”が伺えるのです。見事な存在感ですね。
そんな彼が脱獄する方法とは…?
物語前半で世界観を固め、カタルシスに向けて一直線。やはり、脱獄物は面白い。ガンガン惹きつけられました…けども、どこかに物足りなさを感じたのも事実。
それは本作が実話ベースだからなのでしょう。
看守側に“切れ者”が不在なんですよね。また、刑務所所長も悪役のような存在感を醸していますが、基本的には法律の範囲内で動くだけ。公務員ですからね。
それに登場人物の配置も機能的とは言えず。
物語のスピード感を削いでいました。ただ、逆に言えば現実的なので、予断を許さない緊迫感を醸し出すことには寄与しています。
そして、何よりも大きな問題点。
それは主人公たちが“犯罪者”であること。彼らは反社会的な存在なのに、クリント・イーストウッドの存在感だけで“親しみ”を持たせるのは反則だと思うのです(情感的な描写を最小限にしたのは正々堂々としていましたが)。
まあ、そんなわけで。
モラルとか道徳とかは棚上げしたほうが楽しめるサスペンス。70年代後半の作品のため、物足りなさを感じる部分もありますが、それは生温かい眼で見守るのが吉です。また、自分が収監されたときの参考になるかも…あ、勿論、僕は捕まる予定はありませんけどね。