サマセット7

ミッション:インポッシブル2のサマセット7のレビュー・感想・評価

3.5
ミッションインポッシブルシリーズ第2作品目。
監督は「男たちの挽歌」「フェイス/オフ」のジョン・ウー。
主演はシリーズ通じてトム・クルーズ。

人造の殺人ウイルス「キメラ」とその特効薬「ベレロフォン」が、CIA工作員アンブローズの裏切りにより強奪される。
ウイルスと薬の奪還を命じられた工作員のイーサン・ハント(トム)だったが、奪還するためには女泥棒ナイアの協力が必須であった。
イーサンはナイアに接近するが…。

前作を超える大ヒットとなった作品。
ただし、前作から大きくモデルチェンジを図った結果、評価は分かれた。

前作は、スパイものとしての騙し合いとアクションの理想的な融合を見せ、大ヒットとなった。
前作撮影後、製作兼主演のトム・クルーズは、前作監督ブライアン・デ・パルマに続編の打診をするが、一作で完結しているとの理由で断られる。
そこで、代わりの監督として白羽の矢が立ったのが、これまた独自のアクション演出で知られるジョン・ウー監督であった。

監督の交代により、前作と今作は大きく作品の色合いが変わっている。
監督ごとの個性の違いを味わう、というのは、このシリーズの、少なくともM:I3までの楽しみ方の一つだろう。

最大の違いは、明らかに今作がトム・クルーズのアクションを中心に作られている点にある。
前作では、一切見られなかったガン・アクションやカーチェイスシーンが、今作ではかなりの尺をとって描かれている。
その結果、専門家チームによる騙しのゲームという要素は大きく減少した。
この点は、サスペンスを得意とするデ・パルマから、アクションを特徴とするジョン・ウーに監督変更した以上、当然の結果と言える。
とはいえ、前作で既に指摘されていた原作ドラマからの乖離は、一層進んでしまった。

今作のアクション描写は、まさにジョン・ウー監督印のもの。
特有の全身を使ったダイナミックな動き、二丁拳銃、接近して銃を突きつける場面、白い鳩、スローモーションの多用、異様にカッコ良い歩き姿などなど、いかにもジョン・ウー的な描写が大盤振る舞いされる。

トム・クルーズのアクション演技は、前作に比べて質量とも大幅に増大している。
最大の見どころは、終盤の敵アジト潜入と脱出の際の一連のアクションだろう。
炎の中バイクで疾走するトム・クルーズは、笑えるほどカッコいい。

笑えると言えば、今作の過剰なまでのド派手なアクションは、突き抜けていてもはや笑える域にある。
序盤、特に物語上の意味もなく映し出されるトムのノンスタント・ロッククライミング!!
前作を彷彿とさせるイーサンが吊られるシーンのビル一軒分の落下距離!!
最終盤の恐るべき長尺のバイクアクションと格闘!!
華麗に飛び蹴りを決めるイーサン!!
特に印象に残るのは、イーサンがナイアをスカウトするために、車でナイアを追跡する場面。
トム・クルーズ特有の「カッコ良すぎて胡散臭い」スマイルを浮かべながら、ストーカーのように唐突に現れるイーサンの姿には、シュールな笑いが禁じ得ない。
この笑えるほど突き抜けたアクション描写が、今作最大の魅力だ。

イーサンと真っ向から対立する敵を用意した点も、前作と異なる。
敵役アンブローズは、イーサン同様の変装技術と戦闘技術をもった工作員である。
彼とイーサンが、ヒロインのナイアを挟んで対立し最後には雌雄を決するという構図は、人間関係が入り組んでいた前作と比べて、シンプルである。
アンブローズの敵役としての存在感は、可もなく不可もなくというところか。若干の小物感は否めない。

イーサンが相手の裏をかく描写もいくつかあるが、同じパターンが多く、2度目以降はやや単調に感じた。
前作に比べて騙し合いの要素が質量とも大きく減少した点は、個人的にはそこが好きだっただけに、残念なポイントである。

今作のテーマは、端的に、アクション俳優としてのトム・クルーズのカッコ良さだろう。
今作で問題となっているウイルスや薬、ヒロインの存在は、全て物語を牽引するための道具立てに過ぎず、テーマ性を思わせる描写は見出せない。
今作の全ての要素は、トムを引き立てるために存在する。
この意味で今作は、このシリーズの「トムのためのシリーズ」という側面を、2作目にしていきなり全開で露わにした作品と言えようか。

前作から大きくモデルチェンジした、独自の魅力のある続編。
なお、前作に続き登場するハッカー・ルーサーはイーサン以外には全シリーズ通して参加する唯一のキャラクターである。
好きなキャラクターなので、皆勤は大変喜ばしい。最新作でも元気な姿を見せて欲しいものだ。