kidoぽん

ウエスタンのkidoぽんのレビュー・感想・評価

ウエスタン(1968年製作の映画)
5.0
文句なしの5点満点で、今後も揺らぐことがないであろう自分史上最高の傑作。3時間という上映時間がまったく苦にならない、むしろずっとこの映画世界の中に居させてほしいと思えた、初めての作品。

西部劇が好きだ。なぜ好きなんだろう。そこには、復讐に生きる男たちのハードボイルドな神話がある。あるいは、移りゆく時代の流れに翻弄される人々の切なさがある。人生という長い旅路の果てに決着をつける、1発の銃弾がある。もしかしたらそれは、ガトリングガンの何千発かもしれないけれど、命を散らすクズ野郎どもの血しぶきは不思議と美しい。

そして、何よりも、砂と風がある。西部劇を彩るのは、いつも砂と血のしぶきだ。舞い踊る砂のきらめきがどれほど美しいか、西部劇の価値はそこにあると本気で思っているし、それさえ美しければ、たとえ宇宙が舞台だとしても、西部劇なのだと思う。

映画『ウエスタン』には、いま綴った全てが、最高純度で映し出されている。来ない電車を駅で延々と待つ3人、鳴り響くハーモニカ、ヒロインを俯瞰するアングル、敷設されてゆく鉄道線路…その全てが詩なのである。ラストバトルでハーモニカのメロディがテーマ音楽に乗ったときは、感動のあまり唸りながら震えてしまっていた。

長いなんて一切問題じゃあない。こんな映画が存在すること自体が奇跡だと思う。
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