pika

M★A★S★H マッシュのpikaのレビュー・感想・評価

M★A★S★H マッシュ(1970年製作の映画)
5.0
賛否の振り幅がデカイ作品だと聞いていたが個人的にはよくぞこんな傑作を作ってくれた!とブラボーしたくなるくらいツボ。50年近く経ってるけど全く色褪せていないし、ふざけすぎてるけど反戦の説得力があるし、むしろヘビーで小難しい話よりもストレートに届くんじゃないかとすら思えた。
ブラックでシニカルな切り口が最高に楽しい。クソ野郎なんだけど胸熱!

度が過ぎるほど延々とふざけていながら、医師としては優秀で手術となれば大真面目にこなしていくため、ドン引きするレベルのクソ野郎なんだけど全然憎めない、どころかいつの間にやら「そっち側」の思考になって一緒に楽しんじゃう。
ゴルフを名目に日本へ手術しに行ったり、軍の病院を勝手に使ったり、帰ったら部屋に戻る前に着替えもせず手術をこなす描写など、医師としての真摯な面をさり気なく入れ込むシーンの塩梅が上手い。
相手の最も嫌なところを付いてくるイタズラの手法が差別的だったりして今じゃ作れない描写もあるが、差別を描きたいのではなく体制や軍に盲目的に従事してるやつらは人種も性も関係なくメタメタにぶっつぶしているだけなので、描写だけ切り取ると不快だが、戦争という最低の格差商売と比べたら可愛いものでしかないし、綺麗事では勝負にすらならないだろう。

権威にアカンべーする映画がホント好きで、この映画はまさにダークヒーローそのものだなと、やり口は強烈だが、人の命を救う医師の視点から見れば、命を使い捨てにする無為な戦争を批判するためだったらどんな上官だってコケにするし、セックスだって放送するし、ゆすりのネタも捏造する。宗教もセクシャリティも小バカにするペインレスのくだりも、仰々しい最後の晩餐でブラックなジョークを混ぜつつ、苦悩そのもののバカらしさをユーモラスに指摘している。

アメフトの、出来レースで始めて卑劣な手段も問わずめちゃくちゃの泥沼試合になる様を、映画では直接的に描いていない戦地の縮図としてラストに持ってきたのも面白い。音楽や編集リズムや効果音など、クラシカルなコメディテイストにしているのも笑える。
シーンの繋ぎにリズムや緩急を生むラジオの放送が伏線になっているのも上手い。
名もなき運転手に永遠と「ガッデム・アーミー」と吐き捨てさせているのも秀逸。
エリオット・グールドが撮影中に「本当に監督は頭がイカれてしまったからマジで精神病院へ連れて行ったほうがいい」と言わしめたエピソードもカッコいい笑

台詞も演技も演出も掘り下げるほど意図や意味が浮かび上がってきて面白い。
今誰を、どこを撮っているのかわからないくらい指導せず俳優に自由にアドリブさせて、演出というものをカメラの中から排除した手法で作られたとはとても思えないくらいに緻密に計算されていて凄い。
ホント面白い。何度も見たい。Blu-ray買おうかな。
pika

pika