菩薩

セカンド・サークルの菩薩のレビュー・感想・評価

セカンド・サークル(1990年製作の映画)
3.6
不気味なまでの静けさの中、時折表出する暴力性に眼を見張る。突然の父の死に向き合う一人の青年、機械的に動く官僚、事務的な検死官、高圧的な葬儀屋、青年の意思とは関係無く勝手に進んでいく死後処理、雪の中父の体を洗い、消毒に務め、服を着せ、死因をつけ、棺桶を当てがう。力なく抵抗する青年の手元にも何も残ってはおらず、父が遺した物は僅かな記憶だけ、ただのガラクタである。唯一火葬にだけは抵抗した青年であったが、結局はその全てを火に投げ入れ、物質と成り果てた父に別れを告げる。父=ソ連、全ては灰燼に帰し、一つの国が終焉を迎え、赤の画面は幕を閉じる。まるで無意味な後処理、何も残らず、何も遺せず、ソクーロフの冷たい眼差しだけが突き刺さる。

「我より先に逝く親しき者は幸いなり。」
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