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レバノンのsyuriのレビュー・感想・評価

レバノン(2009年製作の映画)
3.6
 1982年イスラエル軍がレバノンに侵攻する。戦車に搭乗した4人の兵士が、爆撃後の市街地に向けて出発した。優柔不断な指揮官アシ、恐怖で引き金を引けない砲撃手シムリック、反抗的な弾倉係ヘルツル、マザコン操縦士イーガル。彼らの任務は残党兵を始末することだった。任務は簡単に終わるはずだったが、思わぬ事態で彼らは窮地に追い込まれてしまう

ヴェネチア映画祭で金獅子賞を取ったイスラエルと欧州の合作

この世界には星の数ほど「事実」がある。作家、ジャーナリスト、映像作家など表現者、伝達者たちはその無数の「事実」の中からどの事実を選びとり伝える

ならばイスラエル映画『レバノン』は、どんなメッセージを観客に伝えたかったのか?

冒頭の壮大なしなだれたひまわりが うなだれた人間のようにみえてくる 疲れきった千や二千の兵士たちの姿に見えてくる悲壮感 戦車とひまわり畑というミスマッチな絵柄が記憶に残る

映画が始まってからラストに到るまで、カメラは戦車の中から一歩も外に出ることはない。戦車内部で起こる密室ドラマと、スコープ越しに見る風景だけで90分を描き切っている。この息詰まるような閉塞感は只事ではない。独特のジメジメとした圧迫感で観客自身が戦車に乗って戦争を疑似体験しているようで秀逸であり見たこともない感覚の映画になっている

人間とは何の為に生まれ何の為に生きているんだろうと考えさせられる作品。誰が良い誰が悪いではなく、あくまで中立的な視点で一人一人の心情をきちんと描いてあります 遊び心など全く入っていない真面目な戦争映画です 価値ある作品だと思えます
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