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子供の四季 秋冬(あきふゆ)の巻のzhenli13のレビュー・感想・評価

4.5
「子どもは真っ直ぐ向いて、大手を振って歩いてればいいんです」
『春夏の巻』よりさらに物語の機微が際立ち、その機微をなぞるショットが切なすぎる…走る子どもたちに追随しズームアウトしていくカメラ、しかし金ちゃんだけが足を止めるのでカメラ=子どもの一群と遠ざかる。その距離。距離は感情だ。がんばれがんばれの掛け声とともに金ちゃんをおんぶする三平と善太と子どもたちの足だけのショットは、一塊となって同じ方向へ進む。
子どもの領分は大人の事情に絡めとられる。孤独なロングショット。孤独に寄り添う深い森と鮒。海鼠塀の大きな蔵とその前にある橋が何度も出てきて、子どもたちの攻防や往来があるだけでなく、かつて姉妹のような女学生仲間だった吉川満子と若水絹子が家の確執により無言で視線を交わす場となる。
子ども同士のつながりを選んだ金ちゃんが、高い高い椎の木にどんどん登ってく。皆に認められたい一心で懸命に椎の木の枝を揺らす。高い木の上の金ちゃんと、真下で椎の実を拾いまくる子どもたちの切り返し。その後の展開が読めるだけに切なすぎて泣ける…
この高い高い木(現代の我々から見たらちょっとあり得ないくらいの高さ)に登る子ども、または名前を連呼しながら居なくなった者を探すシチュエーションは『団栗と椎の実』『信子』でも反復される。
坂本武が馬に乗るシーンが前半より減るのはちょっと残念だが、彼の服装もまた季節を感じさせて楽しい。夏は白い麻の詰襟にヘルメット帽のコロニアルスタイル、冬は鹿撃ち帽に着物とマフラー。

最後ばっさり欠落しているので金ちゃんのその後が気になる〜!とブックレットをひらくと最終巻のシナリオが再録されていた。三平たちが軍歌を歌いながらの完結のためGHQに削除されたとのこと。前半の『春夏の巻』もラストが軍歌で削除されたそう。そして金ちゃんの父 老獪(名前…)の顛末は哀れだった。まるで天罰のように徐々に目を患い失明していくというエピソードまで付加され最後までヴィランとなる。
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