まぐ

サマータイムマシン・ブルースのまぐのレビュー・感想・評価

4.6
夏!青春!タイムマシン!というキャッチーな要素が心地よく同居する映画。
演劇が元という事ですが、映画ならではの要素も満載で、監督の手腕を感じました。

例えば序盤は脚本的にはわけがわからず、退屈になりがちなパートだったのですが、それを映像演出で補い、見る人の興味を持続させることに成功していると思います。気になるところでわざとシーンを移すような演出は演劇ではできないでしょう。
細かいことですが、個人的にはコーラを零すのをわざわざドミノ倒しのような表現にしてバタフライ効果を暗示する魅力的なシーンに仕上げていたのが印象的でした。

タイムマシンものということですが、日付指定はできても時間指定ができないという縛りが物語に切迫感や緊張感を持たせ、主人公たちが力を持ちすぎなかったのは脚本の妙だと思います。

ただ、一度見ればわかることをわざわざ説明し直すシーンが多かった印象もありました。もちろん大衆に向けての配慮なのは承知ですが、もう少し説明台詞を減らすことができたのではないかと思ってしまいます。
それとオチに関して。見る人の多くは「決められた枠に滑り込む」という台詞に対して、それでいいのか?という疑問を抱くと思うのですが、それに対しての主人公の答えが苗字を変えることだというオチにまだ少し疑問が残ります。結局僕らは決められたレールを外れることはできないのか、という軽い絶望感の残るエンドになってしまっている気がして。人の脚本に自分ならこうする、と口を出すのは愚かだと心得ているのですが、個人的には主人公には「未来なんて関係ねえ、この先どうなろうがおれは今この娘をものにするんだ」と、レールをなんとか変えてやる、みたいに考えて欲しかったです。過去は変えてはならないけど未来は変えても構わない、と劇中でも言っていましたし。まあその場合田村くんが消滅してしまったり、脚本に矛盾が生じちゃうんですかね…難しいですね、タイムスリップものは…

気になった所もありましたが、とても良い映画でした!
個人差あると思いますが、自分は夏の空気感とタイムスリップのおもしろみは時かけ以上に感じられる映画じゃないかな、と思いました。説明がしっかりされるおかげで、誰にでも薦めやすい映画になっていると思います。
まぐ

まぐ