HK

動乱のHKのレビュー・感想・評価

動乱(1980年製作の映画)
3.5
「日本沈没」「八甲田山」などの森谷史郎監督による歴史映画。キャストは高倉健、吉永小百合、米倉斉加年などなど

5.15事件から2.26事件までの間の時代背景で起こった青年将校たちのクーデターを契機に生じた皇道派と統制派との対立を背景に、脱走した自分の部下を死なせてしまった一人の軍人と、その脱走兵の姉であり芸者になってしまった一人の女との純愛を描く。皇道派として無謀な反乱の先陣を切る男の運命はいかに。

森谷史郎監督作品はこれまでに見てきた映画では「小説吉田学校」とかが一番好きなんですけど、今回の映画はちょっとばかり捻りがないというか、高倉健と吉永小百合という大物俳優たちによる大立ち回りの演技にいろいろと任せきってしまったような気がしますね。

個人的には、劇中のインターミッションでかかる劇半音楽などは個人的には大好きです。小椋佳さんが作曲しているんでしょうかね。個人的にはあそこのピアノはとても良かったと思います。

ただね…それ以外の部分はよくある邦画。映像的な工夫はあまりないというか、一番印象に残るのは健さんと吉永小百合が浜辺で大空と海をバックにしながら長回しで情感を見せるロングショットが印象深いのですが、これが退屈に見えてしまうような部分もあります。退屈に見えなくてもちょっとインパクト不足というかね。

吉永小百合は今回は日本が経済的に困窮していたがために追い込められる貧乏を背負った悲劇の女性というスタイルで登場していますが、なんというか彼女はスターの演技が際立ってしまうためにちょっと高貴な雰囲気を漂わせてしまいちょっと庶民感がなくなってしまうのですよね。ゆえにあまりこのような女性もしっくりこない。

ただ、高倉健という大御所俳優を置くことによって、はじめてバランスが釣り合うような気がしましたね。ただ正面から抱き合うシーンをロングで見せるだけでこの二人はこんな風格が漂うのですから凄いとと思います。

森谷さんの映画は野村芳太郎さんの映画のような悲劇性や冷徹な空間もちゃんと用意はされているのですが、ちょっとばかり俳優の演技に頼りすぎちゃっているような印象が残る。野村さんは震える舌などでは演出で見せていますからね。それゆえにちょっと緩慢になってしまう所がう~んてなってしまいます。

しかし、終盤のクーデター決行までの盛り上がりのシーンはとても良かったと思います。あそこでの音楽も映画に一種の盛り上がりをかけてとても良かったと思います。この映画は音楽に救われたかな。

いずれにしても、見れて良かったと思います。脱走兵の描写とかが見れる邦画も新鮮。
HK

HK