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翼よ!あれが巴里の灯だのshibamikeのネタバレレビュー・内容・結末

翼よ!あれが巴里の灯だ(1957年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

あーいつなんか、大嫌い♪大嫌い♪もう絶対、笑いかけたりしてあげない♪お調子者!

LINDBERGというと、やっぱり「平成イヌ物語バウ」がパッと浮かぶ(EDの「二人きりで行こうよ」も名曲)。

そんな日本のバンド LINDBERGファンだったアメリカ人が自身のファミリーネームもLINDBERGにし、大西洋単独無着陸飛行を成し遂げる(せーの!逆!)。

タイトルだけは知っており、ずっと観たかった本作。昔の映画ってどうしてこう邦題がイカすのだろう。「翼よ!あれが巴里の灯だ」。日本のオリジナルタイトルと知った時の衝撃。邦題考えた人、天才。一編の詩を読んだような感動がある。リンドバーグは飛行中、1人ぼっちじゃなかった。飛行機、翼の相棒がいた。

日曜日ということもあってか劇場は劇混み。高齢者でごった返しており、全員の年齢を合計すると天文学的数字になるのではないだろうか、といらぬ心配をする中年の自分。日本のLINDBERG達と今、あの世へTake Off!

正直、邦題の素晴らしさだけでオーガズムに達していた自分としては、映画の内容はちょっとガッカリだった。何というかあまりドラマチックに思えなかった。凄く現実的な映画に見えた。リンドバーグとスポンサーが夢に熱いというのはちょっと感動したし、飛行機のデザインは超かっこいいと思った。
しかし、リンドバーグが小さな飛行機会社と飛行機製作に励んだり、飛行中の最大のトラブルが睡眠不足など、案外普通に思えた。「人類の誰1人として成し遂げたことがない」という強烈な事実に自分がピンときていないのも感動が少なかった原因かも知れない。あとは、自分がビリー・ワイルダーの映画をあまり好きじゃないとかか(情婦は面白いと思う)。

当時を知らない自分としては、大西洋横断に挑戦者が続出しては、命を落としていたことなど興味深かった。名作映画「ライトスタッフ」でもスピードの限界に挑むパイロット達が次々と命を落としており、やはり「命知らず」という言葉は飛行野郎にピッタリだと思う。カッコいいなぁ、と憧れるけど自分には無理!

現在の我々が飛行機に乗ると小綺麗にしたCAさんが「アテンションプリーズ。ほにゃららほにゃらら…それでは皆様、快適な空の旅をお楽しみください。」とか言い、我々乗客は「び、ビーフ、プリーズ…」とびくびく口を震わせている。本作の飛行は、快適な空の旅なんかとはかけ離れている。超狭い機内。話し相手はハエ一匹。自分がどこにいるのかもハッキリしない。心細い心細い心細い。死んでしまうんじゃないか、という恐怖。しかし、若きリンドバーグは大西洋横断をやり遂げる。闇夜に光輝くパリの街。パリはやっぱり夜がいいね(ダジャレ)。10年早いと言われていた偉業を成し遂げた。

パリに到着すると、熱烈な大歓迎を受けるリンドバーグ。あまりにも大勢の人がリンドバーグに駆け寄り、衰弱しているリンドバーグが死んじゃうんじゃないかと不安になった。飛行機も野次馬が破壊しそうじゃないか。

郵便飛行の仕事をしていた無名の若者が自分の命も顧みず、人類で最初のことをやり遂げた。大勢の人に感動と夢を与えた。我々人類は人類最初を求めている。感動と夢を求めている。
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