継

コンドルの継のレビュー・感想・評価

コンドル(1975年製作の映画)
3.5
武装した男達に襲われたCIAの外郭団体。外出していて難を逃れたコードネーム“コンドル” ことターナー (レッドフォード) は、CIA本部に身柄の保護を求めるが...

ウォーターゲート、オイルショック、チャーチ委員会の告発よりも、以前の作品。
原作では麻薬だったネタをある物に変更して 当該国へ干渉する組織の謀略に言及してみせた脚本の先見性に驚かされます。

元CIAのスノーデンがNSAによる国際的監視網を告発して追われる身となるその約40年前に、属するCIAから突然追われる身となるターナー。
スノーデン事件の翌 '14年作『キャプテンアメリカ・ウインターソルジャー』では、レッドフォードは本作を織り込み済みの役柄を敬意とジョークを込めてオファーされ、その存在感によって組織の暴走を風刺するシリアスなストーリーに説得力を持たせました。

表向きDELLの社員だったスノーデンのように、便宜上とは言えベル研究所で培ったスキルで追跡を撹乱し、“CIAの中に別のCIAがあるのかも”なんて台詞も吐くレッドフォードは、
約40年後にスノーデンが頼ることになる手法をおぼろげに予見してみせます。
『ペンタゴン・ペーパーズ 』が『大統領の陰謀』とウォーターゲート事件を通して繋がったように、本作はレッドフォードのジャーナリズムに寄せる思いを持ってして『大統領の陰謀』へ繋がっていきます。



ツイードのジャケット、もしくはPコートをラフにジーンズで合わすレッドフォードの着こなしは、真似するんだけどあんな爽やかにはならなくて(>_<)!、
マックス・フォン・シドーは対照的なフォーマルで、一分の隙もない着こなしがそのキャラクターと共に強烈でした。二人の会話はしみじみと良かったですね。

フェイ・ダナウェイは写真が趣味という設定。劇中では写真家ダイアン・アーバスの作品を借用してました。
アーバスはキューブリックの『シャイニング』で、あの双子の元となる作品を撮った写真家。女性写真家としてはサラ・ムーンとかの方が好きですけど、人物ではなく風景をモノクロで撮らえた本作のアーバスはイメージと違ってノーマルというか、フェイ・ダナウェイのキャラクターに寄り添う孤独を湛えるものでした。

本作は、今観れば核心まで迫りきれないあやふやさを残し、追う側と追われる側、双方に描写が足りない部分や現実離れした展開があり、評価が芳しくないのも分かる気はします。
個人的にも、シドーの心理描写はもう少し何とかならなかったかと、観る度に思いますし。

ただ、本作の時点でリアルに描けるのがあそこまでだったのもまた事実で、贔屓目かもしれないけどその先見性の意義を鑑みる意味で、もう少し脚光を浴びても良い気はするんですよね。
ソフトの特典映像('03年撮影)で、“現実が(本作を)上回ってしまった” と笑うレッドフォードの笑顔は苦いものでしたけど、
“あの後” のターナーはきっとスノーデンのように戦い続けたんだと思わずにいられません。
欠けてるものがあっても惹かれる、好きとは言えないけどよく観る。自分にとってはそんな映画です。
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