こたつむり

神経衰弱ぎりぎりの女たちのこたつむりのレビュー・感想・評価

神経衰弱ぎりぎりの女たち(1987年製作の映画)
2.9
情念掻き乱されるほどに。
《ナンパ男》に振り回される女性たちを描いたドタバタ劇。

とてもお洒落な作品でした。
鋭角にして、やわらかく。
春の花壇のようにカラフルで。
燃え盛る情熱が花火のよう。

しかし、それは表面だけ。
物語としては、格好悪いくらいに足掻く女性たちを描いたもの。何しろ、主人公《ペパ》は下を向きません。《ナンパ男》に振り回されても「むきーむきー」と叫びながら(時には電話機で窓ガラスを割りながら)前に進んでいくのです。

いやぁ。これが女性の持つ強さなのですね。
『トーク・トゥ・ハー』『私が生きる肌』のアルモドバル監督作品ということで鑑賞したのですが、本作は女性に向けた女性賛歌。正直なところ、男である僕は圧倒されるだけでした。

しかも、面白いことに《ナンパ男》の所業を「あの男はヒドイ奴だ」と非難する人物が出てこないのです。これは“情熱の国”として、スペイン人の男性に搭載されている基本スペック…だからではなく。

女性から見たら“男がフラフラすることなんて、本当はどうでもいい”のでしょう。女性が本来の強さを発揮すれば、軟弱な男なんて足元にも及ばないのです。いやぁ。なんだか彼女たちがメスのライオンのように思えてきましたよ。草食動物である僕は逃げたほうが得策ですね。

まあ、そんなわけで。
「女性が化粧するのは自分のため。くだらない男に媚びるためではない」と耳にしたことがありますが、まさしくそんな物語。自分らしく生きるため、華やかに、そして強かに。悲壮感とは無縁の力強い作品でした(だから、男性陣には…オススメしません)。

ちなみに本作は30年前の作品。
フラフープやローラースケート、ファミコンを思わせる電子音など、懐かしい小物が出てきますが、その中でも見ておくべきは、若かりし頃のアントニオ・バンデラス。今回は地味な役柄ですが…それでも色気を隠しきれていませんよ。

それと、同じように個性派女優のロッシ・デ・パルマも出演していました。気が強い役が多い(気がする)彼女ですが、本作では男に振り回される“カワイイ女性”役。これはこれで…なかなか新鮮ですね。
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