月うさぎ

シャッター アイランドの月うさぎのレビュー・感想・評価

シャッター アイランド(2009年製作の映画)
3.8
これぞサイコホラー。事実と思っている事が覆される恐ろしさ。
こういう表現、演出は映画ならではの得意技。
人はいかにして「自分」を認識するのか?
犯罪と精神疾患という異常な行為を行う人の姿から人間の本質を探る試みは実際に犯罪学や心理学として研究分野になっている。
いくら研究が進んでもきっと答えなんて出ないだろう。

時は1954年、第二次大戦のPTSDと妻の死への責任とのトラウマによる悪夢に悩まされるテディ・ダニエルズ連邦保安官は、
ボストン沖の孤島(シャッター アイランド)にあるアッシュクリフ精神病院にチャック・オールと共に派遣される。断崖絶壁に囲まれた島の厳重警備の理由は患者全員が重大犯罪を犯した囚人であるためだ。失踪事件の捜査の名目だが、テディには別の目論みがあった。この病院の裏の顔。恐るべき人体実験の事実を暴くことだ。

到着早々、激しい嵐により島は孤立し、不穏な空気が増していく。明らかに何かを隠している病院側。患者達の異様さ。
そしてテディ自身も悪夢や幻覚に苛まれ暴走し始める。

人体実験と言われているのは実際に行われていた精神病の治療法のロボトミー手術のこと。
脳の一部を切除することで、人格を望ましい方向に変化させる事ができると考えられた。当初ノーベル賞を与えられた程すぐれた技術と評価されていたものの、「不可逆的な人格変化を伴う、人間性を奪う問題の大きい手術」だという事が判明し、1975年頃からはまったく行われなくなったそうだ。
この病院では、ロボトミーが主流の時代に「進歩派」の医師Dr.コーリーによる班ロボトミー手術に対する「実験」も行われていた。

「どっちがマシかな?
モンスターのまま生きるか 善人として死ぬか」

彼はどちらを選んだのだろう?それは意志だったのだろうか?諦めなのだろうか?
モンスターとはどちらなのだろう?
ロボトミーを施術された人間の抜け殻か?
戦争で大勢の人間を殺し、妻殺しの殺人犯として精神異常をきたした危険人物の事なのか?

虚しい余韻が残る、印象的な映画
観終わってすぐ観直したくなる
目線が語るシーンがきちんと入っている
回想シーンの炎の意味も水の意味も。
全て構築され計算された映像もセリフも見事で骨のある映画だと思う。

※コメントにネタバレ書いてます!
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