（ブラス！）です。
これもまた、たまに観てしまう。
90年代のイギリス映画。
（トレインスポッティング）のレントンは
薬物中毒から抜け出せずにいた。
（フル・モンティ）のガズは、
一人息子を失う瀬戸際にいた。
（リトル・ダンサー）のビリーの家族は
ストライキの先頭に立って闘っていた。
1970年代後半の世界的な大不況は、
80年代、90年代のイギリスに
深く大きく影を落としていた。
失業率は二桁となり、街には失業者が溢れ、
都市部ならまだしも、製造業をメインとして
いた地方都市は、絶望的な不況にあった。
石炭から石油へ転換期がそれに輪をかけた。
僕はただ、たまに本を買えて、
たまに映画を観ることが出来て、
本当にたまに、友人と飲みに行ける
お金さえあればいい。
大好きな読書や映画を取り上げられたら、
僕は僕なんだろうか？って思う。
閉鎖寸前の炭鉱の街のブラスバンドを
描いている。壊れたトロンボーンを
直すお金もない。決して晴れることのない
どんよりとした空のような未来。
それでも彼らは音楽と生きる。
演奏している間の彼らは生きている。
不況。貧困。
好きなことを続けていくことの困難さ。
好きなことを手放さなければいけない悲しさ。
地味な作品だと思う。とても地味な作品。
そもそも90年代のイギリス映画の舞台になる
街はどれも貧困と失業に苦しんでいるし、
ハリウッド大作ではないので低予算だ。
あまりハードルを上げずに観てほしい。
主演が（ユージュアル・サスペクツ）や
（父に祈りを）のピート・ポスルスウェイトだ。
この人からして地味だ。
一度見たら忘れられない個性的な顔立ち。
朴訥とした喋り方。鋭い眼光。
そして笑顔。いい。
ラスト。ラストがいい。
自分は何者でもないかもしれない。
それでも、胸を張ろう。
