No.2599
ピカソが絵を描いてるところをひたすら映しているだけなのに、この映画自体がアート化しています。
「ほう、そこから描き始めるのか!」
「そこにそういう色を使うのか!!」
など、目の前で巨匠が描いてるような臨場感があるので、アートファンにはたまらないですね。
1956年製作なので、当時ピカソは75歳!
そんなに高齢には見えないですね。若々しく、バイタリティーの塊です。
1973年に91歳で亡くなるので、その17年前の撮影ということになります。
ムキムキの体で、短パン一丁で(笑)、次々と絵を描いていきます。健康そのもの!
もっと気難しい人なのかな、というイメージがありましたが、監督のジョルジュ・クルーゾーとは気さくに会話しています。
当時、監督は49歳ですから、ピカソとは親子ほどの年齢差がありますが、ピカソも別に偉ぶってない。
当時、クルーゾー監督はすでに「大巨匠」の位置にいました。だから、ピカソも協力的に、監督と二人三脚でいい映画を作ろう、との気概が見えるのです。
クルーゾー監督は、本作の3年前に「恐怖の報酬」でベルリン金熊賞、カンヌ・グランプリを受賞しており、
さらにその前には『情婦マノン』でヴェネツィア金熊賞も獲っています。
つまり「世界三大映画祭」の最高賞を獲得した史上初の監督なのです。
また、撮影はクロード・ルノワール。名前からすぐわかるように、あのオーギュスト・ルノワールの孫なんです。
「印象派の巨匠の孫」が、「20世紀最大の芸術家」を撮影し、それを「映画史に残る大監督」がディレクティングしている、こんなロマンがあるでしょうか!!