チッコーネ

東京戦争戦後秘話 映画で遺書を残して死んだ男の物語のチッコーネのレビュー・感想・評価

4.0
成果の上がらない「行動」を繰り返すより、私的ノスタルジーへの回帰を潔しとしたがる、後ろ向きな姿勢が漂う。
理屈を弄ぶ学生運動家を擁護するようで、実は幻滅している。
個と全体の間で引き裂かれていく者の内面が、焦燥と共に綴られていく…。

近年も流行った「分身もの」のドラマツルギーを脚本の中心に据えているが、全体的にはタイトルが完璧すぎて、内容のすべてを要約してしまっている感じ。松竹→ATGと場を移し、監督はよりリアルでアーティスティックな『青春残酷物語』を撮りたかったのかもしれない。

ゆえにデティールは、素晴らしい。互いを傷つけ合うような男女の交歓に、堂々巡りの押し問答が独白のように被さる場面は、うっとりするほど官能的だ。やり場のない怒りに満ちた若者たちの性を、これ以上は望めないほど理想的に映像化する手腕は、超一級!サイケ+音響のようなOSTもカッコいい。
誘拐→輪姦という、ポルノ映画を牽制するような過激濡れ場も含まれていたが、当事者の目に映る反転した高速道路は、すべての劣情を封じ込めるほど静かで、荒涼としていた。