青二歳

一粒の麦の青二歳のレビュー・感想・評価

一粒の麦(1958年製作の映画)
3.9
集団就職をテーマにした映画!from 福島!タイトルは聖書。新共同からとると、ヨハネ福音書「はっきり言っておく。一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば多くの実を結ぶ。」イエスが死ぬことを受容している宣言というか、自分の死が意味あるものであり、のちに実を結ぶことを知っていて、犠牲を恐れていないかのような一節。エルサレム入りした時の言葉、ゴルゴダ行きのフラグが立ちまくってる時の発言です。強がり発言にしか聞こえませんが、まぁそんな言葉です"一粒の麦"。

閑話休題。この映画は若尾文子可愛い盛り!ってことが見所…というばかりでなくもうひとつ意味がある。1958年で新藤兼人脚本なんですね。のちに永山則夫事件で再び集団就職に焦点をあてる訳ですが、新藤兼人はこの映画に出てくる福島の中学生たちと永山少年(49年生まれ)を重ねることはあっただろうかなと考えます。

1958年当時の15歳となれば、戦中43年生まれ。その少年少女が臨時集団就職列車に乗って東京に向かう。映画はその就職先でのドラマが各様に展開。やや感傷的な演出が目立つものの…よく出来た映画です。
例えば初っ端の臨時集団就職列車の異様さ。そして国鉄ホームで流れる福島県知事(?)かなにかの激励がオープンリールのテープで繰り返されているシュールさといい、その後も随所にゾッとするセリフや小物が散らばってるんですよ。

果たして経済成長を支えた彼等は一粒の麦だったのでしょうか。現代の日本のこの生活水準を享受する度に先人に感謝を送ることは無論忘れられない。けれど犠牲なのか。このタイトルはなんの意味をもつのか。
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