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マイ・アーキテクト ルイス・カーンを探しての4423のレビュー・感想・評価

3.5
ソーク研究所、キンベル美術館、バングラデシュ国会議事堂などを創造した最後の巨匠ルイス・カーンの建造物を巡る、探求の旅。旅人は彼の私生児、ナサニエル・カーン。

建物を介してルイス・カーンという人間そのもの、そして父としての側面を紐解いてゆく。

バングラデシュ国会議事堂の内部が拝めるという点においては、貴重なドキュメンタリー作品と言えるかもしれない。

残された映像や写真を通して見ても、カーンという人間はその喋り方や動作からひどく変わり者で周囲から孤立していたのだろうと窺える。顔にひどい火傷の痕(三歳の頃、燃える石炭で顔と両手を焼く事故で)があり、外見だけはいただけなかったと他のアーキテクトも語る。私生活では複数の家庭を持つなどその人生は風変わりで数奇的だったようだ。

そして建築家としては偉大であった人間が、最期は駅のトイレで死んでいるところを発見されるのである。さらに、パスポートに記載していた住所を消していたため、身元不明の遺体として収容されたらしい。

優れたアーキテクトは時空をも超越する。この建物が50年、100年先はどうなっているのかを見通す必要があるのだ。

「まちづくりは100年単位の計画が必要」という名言もある。多くの観光地がたかだか数年で成功するはずがない。建造物もまた然り。観光にせよ建造物にせよ、「ももとせ」を迎えたとき、果たして真の桃源郷になりうるのか?

『スカム』の製作者の一人が、本作が古臭さを感じさせないのは外の世界が一切映し出されず、隔離された施設が舞台だからだと語っていたことをふと思い出す。建物や外界は時代によってうつろい、侵食されていくものということなのだろう。

今も時代を超越し続けている建物はあるだろうか。ルイスが創造した建造物は、いずれもそれに近い形にあるように思える。ルイスの目は、時代の先の先までを見通していたに違いないと思うからだ。

いわゆる仕事人間で家庭をないがしろにしてきたルイスの『人生なんて偶然によって決まる。周りの影響がとても大きい』という言葉が、未だに何者にもなれない私の背中を後押しする。
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