こたつむり

机のなかみのこたつむりのレビュー・感想・評価

机のなかみ(2006年製作の映画)
3.9
机のなかみ≒心のなかみ。

相変わらず吉田恵輔監督はエグいですな。
日常で秘された部分をあえて描いてしまうので、“イケないもの”を観ているような気分になるのです。本作で言えば…やはりボールペンですね(使い方は秘密です)…あ、当然のようにトイレの場面もありますよ。

それと、役者さんたちの。
魅力を引き出すことに長けていますよね。どんな表情が役者さんを活かすのか…それを熟知しているのでしょう。しかも、主演のあべこうじさんも、鈴木美生さんも。本業は役者さんではないのです。魅力を十全に引き出した監督さんも素晴らしいですが、それに応えた二人も見事。

特に鈴木美生さんは。
“人形”と“人間”であること。この両方を求められる難役。それを見事なまでに演じ切りました。僕が特に素晴らしいと思ったのはカラオケの場面ですね。憧れの男性と二人きりで緊張している様子が歌声から伝わってきたのです。そして、それが彼女の存在に“リアリティ”を与え、ググッと惹き込まれたのです。

また、その他の役者さんたちも。
適材適所と言って過言ではなく。
現実と虚構の真ん中を貫く物語を作り上げていました。

その物語の軸となる脚本も監督さんが執筆。
緩急を巧みに使い分けて“日常”をドラマティックに仕上げる筆致は芸の極み。あべこうじさんの使い方なんて典型的ではありますが、まさしく王道。あの“イタさ”は男性諸君(非リア充に限る)必見でありましょう。

ただ、全般的に。
コントっぽさが残るのは仕方ない…のでしょうね。
かなり低予算の作品だと思いますし。あと、全体的に音量が小さいのもツラかったです。劇場での鑑賞ならば気にならないのでしょうが、ボソボソ声が本当にボソボソになるのは勘弁なのです。だから、自宅鑑賞ではヘッドホン使用を推奨します。

まあ、そんなわけで。
デビュー直後から吉田恵輔監督がただ者ではない、と解る一本でした。低予算邦画に抵抗が無い人には、お薦めできる作品です。

それにしても。
鈴木美生さんが本作以降、あまり活躍されていないのが残念ですな。もしも、若かりし頃に彼女が傍にいたら…絶対に恋に堕ちていたと思うくらいに魅力的だったのですが…って何を言っているんだか…。
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