Kuuta

パプリカのKuutaのレビュー・感想・評価

パプリカ(2006年製作の映画)
3.9
色んな人の潜在意識が一つのカオスになっていく。想像力が爆発するかのように、カットごとに一変する画面に圧倒される。赤と灰色の対比が効いた色彩感覚や、夢と現実の区別を全く付けようとしない尖ったアニメ的表現が素晴らしい。

天才になれない凡才。能力の足りない人の欲望。抑圧された自分が一種のアバターと化す夢の世界は、作中で言及された通りインターネットの世界とも似ている。小山内は天才の時田に嫉妬するが、根本には単なる才能の差だけではなく、敦子に振り向いてもらえない悔しさがあったのだろう。

既存の妖怪を一つも出さず狂気のパレードを表現する。悪役の人は「人間は夢を科学で侵すべきでない」と言っていたが、夢の混沌をコントロールして秩序建てようとする彼こそが文字通りの暗黒大魔王だ。

キャラクターの表情、質感の豊かさで物語を動かした東京ゴッドファーザーズと比較すると、パプリカというキャラは、アニメ的な肉感の持つ不自然さを敢えて表現している気がする。敦子の描写では徹底的に肉感を抑えているが、最後の最後で一つに統合され、「人らしく」成長する。刑事だけではなく、敦子自身もパプリカにセラピーされていたといえる。

刑事粉川のトラウマは友人の死を受け入れられず、映画監督の道を歩めなかったことに起因している。今作を通して彼は、監督とは別の形で17歳の時の夢を叶えている(ウソも真も大事にすべき)と気づき、再び映画と向き合えるようになる。何度も出てくる蝶は胡蝶の夢のメタファーだろう。

平沢進の音楽も素晴らしかった。78点。