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BRICK ブリック/消された暗号 BRICK ブリックのnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.9
 薄暗く、冷たい排水溝をじっと見つめるブレンダン(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)、その視線の先には2ヶ月前に別れたエミリー(エミリー・デ・レイヴィン)が無惨な姿で横たわっていた。2日前、南カリフォルニアのサンクレメンテ高校、ブレンダンは、ロッカーから謎の指令めいた文言が記された紙片を拾う。「12時30分 サンメントリ デルリオ」と書かれたメモに従い、交差点で佇んでいると、突然公衆電話のベルが鳴った。受話器を取ると、その声の相手は以前、付き合っていたエミリーだった。彼女はブレンダンに窮地に陥った身の上を告白する。「ブリック、フリスコ、ピン、タグ」と謎めいた言葉を彼女は口走り電話を切った。そのエミリーの言葉の真意が掴めないブレンダンはエミリーの周辺を探ろうとする。演劇部の花形女優カーラ(ミーガン・グッド)やエミリーのランチ友達、ローラ(ノラ・ザヘットナー)にブレンダンは話を聞きに行くが、エミリーについての質問をのらりくらりかわすだけ。ただローラは「コーヒー&パイ、オー・マイ!」の店名をブレンダンに告げた。翌日、店に向かったブレンダンが出逢ったのは、ドード(ノア・セガン)だった。ブレンダンは秘かにドードを尾行し、やがて彼に寄り添うエミリーの姿を目撃する。その日の深夜、ブレンダンは排水坑からあふれる“何か”にエミリーが呑み込まれる幻覚を見る。

 2ヶ月前に別れた最愛の人の突然死の謎、無惨に転がる死体の様子は真っ先に『ツイン・ピークス』第一シーズンを思い出すが、今作には刑事はおろか親戚・親族すら出て来ない。事件はあくまで親友ブレイン(マット・オリアリー)の協力を得ながら、ブレンダンの目から見たエミリーの死の背後に隠れた闇を掘り下げる。だからこそその闇は鬱蒼とした深まりを見せ、フィルムノワール高校生白書の如き輝きを見せる。清純でクラスの華だと思われていた彼女の精神や私生活は荒廃していることがすぐに明らかになり、事件の裏にあるシンジケートの存在が明るみになる。スーツ姿ではなく、専らカジュアルな普段着といかにも弱そうなメガネで捜査に当たるブレンダンはなかなか頼りないし、事件のぬかるみに足を取られながらも、その実しっかりと事件の真相を掴み、黒幕との立場は逆転する。ハロウィン・パーティのフライヤー、矢印の書かれたタバコ、赤いチャイナドレスと無数の星が書かれた手帳。幾つもの意味深な道具立てを準備しながら、不思議な運命に導かれたピン(ルーカス・ハース)やタグ(ノア・フレイス)、そしてブレンダンら男たちの運命。『刑事ジョン・ブック 目撃者』のサミュエル君がよもやあのような奇人になっているとは思いもしなかったが 笑、ビッグ・ディールに挑むピンの前に降りかかる衝撃の展開、ファム・ファタールな女の囁きが淫靡に乱れる。
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