こたつむり

ハンニバルのこたつむりのレビュー・感想・評価

ハンニバル(2001年製作の映画)
3.7
♪ 君のこと 思う夜長くて
  ふくらみすぎて
  君じゃない君にもう 勝手に恋してるかも

目の前に聳え立つ壁。
それはオリジナルの存在感。
あの『沈黙の羊』の続編なのに“影が薄い”のはジョディ・フォスターの不在が原因。やはり、彼女の代役は簡単に見つかりません。

特に日本人は(自分にとっての)オリジナルを大切にする傾向があります。ドラえもんと言えば大山のぶ代さんですし、笑点と言えば馬面の円楽師匠ですし、林家こぶ平は9代目を就任してもこぶ平なのです。

だから、とても惜しい作品ですよね。
リドリー・スコット監督の落ち着いた筆致は“臓腑の底”に悪意を溜め、それが最後の最後で花開き、その毒々しい香りが充満する展開に気分が悪くなるのは必至なんですが…。

これはサスペンス映画には最高の誉め言葉。
今から20年以上も前の作品というのが信じられないほどです。凡庸なる僕でも分かるレベルですからね。もっと評価が高くても良いはずなんです。

でも。それでも。
それ以上に大切なのは配役…ということなんでしょうね。役者さんの名前で映画を観るかどうかを決める、なんて行為は、一般的な話ですからね(本当は監督さんの名前で選んだ方がハズレる可能性は下がるんですが)。

確かに説得力がないのも事実。
ジュリアン・ムーアだと、なぜ、レクター博士が彼女に執着するのか…という部分に首を捻りたくなります。ぶっちゃけた話、彼女だとビジュアル的に“強すぎる”んですよ。

だから、着地点の物足りなさも同じ話。
偏執的なレクター博士が“凡庸なミス”を犯すのは微妙なところ(話によるとジュリアン・ムーアの具申で結末を変えたとか…うーん)。

まあ、そんなわけで。
猟奇的な刺激に満ちているのに角度によっては残念な作品。『羊たちの沈黙』と続けて鑑賞すると物足りなく感じますので、できれば前作を忘れたほうが良いですね。

ちなみに僕は本作を観ていたことを忘れていました。クライマックスでようやく思い出したんですが、これはもしかして僕の脳味噌がスカスカなのではなく、実は誰かに…。
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