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マイティ・ハート/愛と絆のBaadのレビュー・感想・評価

マイティ・ハート/愛と絆(2007年製作の映画)
5.0
正直評価に困る映画です。

描かれていることは実際に起きた事件のほぼ忠実な再現。

パキスタン人の捜査官、タクシーの運ちゃん、情報提供者の最初の窓口になったパキスタン人、辺りには多少シンパシーを持てる要素はあるものの、事件の関係者は背景に出てくる双方の政府高官も含め、あとはなんだかな~のうさんくさい人物ばかりで、こういう関係性の中で政治や取材活動が行われていたらそりゃ事件にも巻き込まれるでしょう、としか思えません。

その上、奥さん仏教徒でご主人ユダヤ教徒、しかもその信条を隠さない、では脇が甘いもいいところ。

とはいえ、実話の映画化としてはバーフェクトな出来ですので、その部分で取りあえずは面白くなくても力作と言えます。

で、そうしたキナ臭い事件の顛末をキナ臭いものはそのままに映像にしてしまった監督の手腕には感嘆するしかありません。

たとえば、パキスタンの情報局のキャプテンが捜査の過程で、ここから先は危険だ、と言ったその後で、昔の部下だけれど今は向こう側の人間だというセリフをちゃんと喋る。

主犯の男の家族関係やその後の処遇についても触れている。

捜査本部がおかれるインド人記者の借りている家では、下働きの家族の子供もちゃんと大事にしてもらえている。
この国の中流以上の階層の暮らしぶりもきちんとフィルムに映っている。
丁寧に見れば下手なドキュメンタリーフィルムよりよほど情報が総合的に上手く処理されており、多少この国に縁がある人はパキスタンとアメリカ、イギリス(あるいはインドも含めていいかもしれませんが)との持ちつ持たれつの歪んだ関係がある程度判るような出来になっている。

そういう意味では大変良く出来たフィルムで、このような離れ業はイギリス人であるウィンターボトム監督にしか出来ないことである様に思います。これは、映画の面白くなさと相殺してもあまりある美点だと思いますので満点を献上しました。決してこの映画の中の記者夫婦の生き方を肯定的に見ているわけではありません。

(何気に情報量が多い 2007/12/10記)
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