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停年退職のakrutmのレビュー・感想・評価

停年退職(1963年製作の映画)
3.9
停年退職を数カ月後に迎える男性の揺れ動く心情をユーモラスかつ丁寧に描き出す、島耕二監督のドラマ映画。サラリーマン小説の名手・源氏鶏太の同名小説が原作となっているので、内容的には安心して見ることができるし、実際に、様々な出来事を収束させていくストーリー展開は見事である。停年退職の寂しさを描きながらも、決して湿っぽくなく、希望を持てるような内容(現実がこんなに上手くいくかは別であるが)も良し。この当時は55歳が停年というのも、この頃から再就職(嘱託)なんてのがあったのも、ちょっと驚き。

日本映画専門チャンネルの「蔵出し名画座」で放映していただけあって、出演者はなかなか渋い。停年退職間近の主人公を演じている船越英二は、とてもそんな役を演じるような年齢ではない(当時、40歳くらい)けど、老け役を見事にこなしている。バーのマダムに求婚されるなど、停年間近ながらも若々しい感じが出ているので、適役なのかもしれない。バーのマダムを演じている中田康子も30歳くらいなのには驚く。そして、手痛い失恋をしたばかりの主人公の娘を演じたのは、松竹を退社して大映に入社したての藤由紀子。若き本郷功次郎が、主人公の部下でとても好青年というおいしい役で出演していて、なかなか印象的。でも、部下(江波杏子、若っ!)の不倫にあれこれ物申す上司という構図は、時代を感じさせる。今では絶対に考えられないだろう。
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