回想シーンでご飯3杯いける

ドゥ・ザ・ライト・シングの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

ドゥ・ザ・ライト・シング(1989年製作の映画)
3.8
約30年ぶりに再鑑賞。黒人映画監督スパイク・リーの初期代表作にして、人種差別問題を鋭く描き、更にヒップホップ文化、黒人ストリート・カルチャーを世に広めたという意味で、後世に大きな影響を与えた記念碑的な作品でもある。

まず、冒頭のシャドー・ボクシングとダンスをミックスした女優のパフォーマンスが印象的。この融合は、攻撃性(ボクシング)とストリート性(ダンス)を併せ持つ本作を象徴していると言える。黒人、イタリア系、韓国系等、様々な人種が生活するブルックリンでの日常を描きつつ、ちょっとした会話や喧嘩から、人種差別の現状やメカニズムを炙り出していく。

今改めて観ると、登場人物がやたら"やかましい"。リー監督作品だからというのもあるが、例えば現代の人種問題を扱った映画で、人種差別的な台詞をここまでストレートに、しかも大量に放り込んでくる作品は無いだろう。そういう意味で、当時のアメリカの状況を知る貴重な作品でもあるし、論争やトラブルを避けたがる若い世代の人達に見てもらいたいとも思う。

ラストには公民権運動を代表する2人の指導者、マーティン・ルーサー・キングとマルコムXの言葉が引用されている。2つのメッセージは似た感じに思えるが、実は相容れない部分を持っている。本作のタイトルは「ドゥ・ザ・ライト・シング」= 正しい事をする、である。しかし「正しい事」が何なのかは示されていない。その答えに向けた道標となるのが、2人によるメッセージである。

なお、この2人のメッセージを、各々プロフェッサーXとマグニートーに置き換えると「X-MEN」シリーズが俄然面白くなるというのは、割と有名な話である。