コミヤ

ドゥ・ザ・ライト・シングのコミヤのレビュー・感想・評価

ドゥ・ザ・ライト・シング(1989年製作の映画)
4.6
授業の課題なのでスパイク・リー作品初鑑賞。

凄まじい。こんな胸が締め付けられるような映画は久しぶり。

劇中印象的に登場する"Love&Hate"という言葉。本作の舞台はLoveとHateの危ういバランスで成り立っている黒人街。イタリア系アメリカ人の営むピザ屋は黒人の人々で賑わい、ピザ屋の亭主はそこで働く黒人の青年ムーキーを何だかんだで大切に扱う。そこには確実に愛があると思う。しかし人々が自分とは異なる人種に対して抱く憎悪の感情も劇中では度々描かれる。

そして映画終盤、ある事をきっかけで一瞬にして全てがHateに変わる瞬間が圧巻。暴力で人は盲目になる。人々の憎悪をここまで凝縮した映像を見て本気で辛くなり、自分が覚えてる限りでは「スーパー!」以来に声を出して泣いた。もちろん別の意味で。

またスパイクリー監督の演出力が半端ない。飽きるシーンが一切ないし、前半でキャラクター達をここまで魅力的に描いているからこそ後半の展開が際立ったと思う。

演出の点では音楽も本作の重要な要素。音楽は普段は言えない自分の胸に秘めた感情を吐き出すツールである。その音楽を奪われた事が白人と黒人の緊張が臨界点に達した理由でもあるので、音楽は全く詳しくないけど黒人の人々にとっては特に大切な物のような気がする。

本作は一方的に白人を非難するというのではない差別の描き方が印象的。最後のあの2人の人物の引用で差別に対してどうすればいいのかを観客に突き付けてくる。

何回も観たいとは思わないけどオールタイムベスト級の大傑作。
コミヤ

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