差別に関して関心はあるんだかないんだか、といった主人公ムーキーのサルの店への最初の一手。あれこそが彼が「the right thing」だと思ったことなのだろう。そう思うといたたまれない。
そして、サルのように被害者が黒人だけではないと見せているのもこの映画の凄いところでもあると私は思う。彼らはサルのピザで育ったも同然なのに、あんな些細な出来事で、なぜサルに手を出してしまったのか。白人が黒人に対する侮蔑があるだけではなく、黒人も白人を侮蔑している。良い人だって絶対いるのに、全員を敵に見てしまう。そんなアメリカ世界の構図が見えるストーリーだった。
アメリカが揺れている今観たからこそ響くのではいけない。いつだって胸に刻まなければいけないこと。そして、こんな映画が作られる世の中ではいけないんだと思う。
1989年にこの作品が描かれて、2019年には「The Hate U give」でも同じことが描かれた。30年経ってもアメリカの奥底にある「憎しみ」は遺伝のように後世につながってしまっている。今の世代で止めることはできないのか。いつか憎しみのない、愛が溢れる世界になってほしいと切に願う。