かつきよ

おと・な・りのかつきよのレビュー・感想・評価

おと・な・り(2009年製作の映画)
3.9
隠れた名作!もっと評価されて!

後輩にお勧めされて鑑賞
聞いたことなかったし、日常な感じの恋愛系と聞いて、好みのタイプじゃないなーとは思っていましたけど、たしかにタイプじゃないはずなのに、予想外に面白かった。
監督のやりたいこと、伝えたい雰囲気が、曲がりくねらずにストレートに伝わって来る。

映画のキャッチコピー
「初めて好きになったのは、あなたが生きている音でした。」
らしいんですが、ここまでキャッチコピーがぴたりとハマって、心地よく表現できている映画そうそう無いと思います。

ストーリーはちゃんとあるし、設定も展開も、リアル寄りではなくちょっと漫画チック

なんだけど、淡々と流れてていく日常、かっちりしてなくてラフなカメラワーク、BGMは少なく、生活音や無音のシーンが目立つなどの影響か、劇中世界なんか、リアルに感じちゃう。
リアルなんだけど、リアルじゃないちょっとした優しさに包まれてる感じ。

最初の方は本当に淡々とした感じで、ちょっとばかし退屈。
でも、なんだかんだ物語が動き出して、どんどんキャラクターがわかってくると、次第に引き込まれていく。

あれ?これ恋愛映画って聞いたんだけどな、、!と思うほどに主人公の二人には別々のドラマが用意されていて、全然出会わない
この二人、いつ出会うんだろう、、、
それは、ぜひ実際に見て楽しんで欲しいです。

ネタバレになるので詳しくは言えないですが、ラストにかけての展開が本当に好き。

タイトルも本当に好き
おと な  り
音(鳴り)、大人、お隣
この映画のエッセンスをよく表現してる
隙のない完璧なタイトリングに感服

あとは、岡田くんがとにかくかっこいい
大人気モデルの専属カメラマンって設定ですが、そのモデルよりもお前ん方がかっこいいやろ!って何度も思ってしまった

あとは、個人的に麻生久美子結構大好きなので、それもよかった!
時効警察とかレンタのCMとか泣くなハラちゃんとか、どちらかというとひょうきんで可愛らしいヒロイン像のイメージが強かったのですが、今作の久美子さんは、そのどちらとも違ってかなりガチ目のヒロイン。
しかし、典型的すぎてつまらないって感じじゃなくて、あーーー、待ってました、、、
麻生久美子さんの正しい運用、、、
って感じ。かなり役にはまってて、岡田くんとのカップリングの想像全然できなかったけど、見終わった後はもう、、、、

何か好きそうだなって要素があったら絶対見て損はない!
全然タイトルも聞いたことなかったから期待値ゼロだったけど、こんな名作が隠れてたとは、、、







以下、ネタバレ有りで感想書きます!!
スクロール注意






ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーネタバレ有













いや、
ふたりが隣人として出会うの
一番最後の瞬間って、、、、、



エモすぎんかーーーーーーーーーーーーーい!!!!(やまびこ)






いやほんとに、
お互いお互いのことは認識してるのは伝わってくるし、お互いの生活音に何か温かいものを感じているのはわかってたよ

でも
すれ違いすぎて



野島さんサイドは野島さんで茜ちゃんが家に上がってきて、二人の関係性、サトルの心の成長、変化、シンゴとのクソデカ関係、自分の本当にやりたい事、、、「おとな」の部分の人間ドラマがめちゃくちゃ濃く展開されててびっくりした。

あかねちゃんのキャラクター強烈だし、胡散臭いしなんかうるさいし最初のはもう地雷女だ!って思ってたけど、だんだん愛おしくなってくる。
旦那の友達の家に勝手に上がり込んで半同棲するのはどうかと思うけど(しかも初対面)
自分にまっすぐなところとか、しんごのこと本当に心から好きなところとか、めっちゃ家のことやってくれるところとか、あんなキャラなのに、心に弱さや不安を抱えてるところとか、、、
ある意味裏表ないところとか、すごく好感が持てた。
だから、喧嘩した時は辛かったし、仲直りでしんごの写真スポット連れてってもらった時はすごく嬉しそうでよかった!
最後の終わり方に関しても、すごくよかったなって思ってる。しあわせなままになってくれ、、、

会社関係の話は、本当にやりたい事、評価されてる事、期待されている事、その軋轢で苦しむカメラマン、、、板挟み、懊悩、ちょっとした自暴自棄、、、
ぶっちゃけ贅沢な悩みだな、で一蹴できそうな勝ち組だとは思うんですよ。
評価されてる仕事だって、元々自分が好きで始めた事というか、今だって嫌なわけじゃないと思うし、それでめっちゃ稼げてそうだし(それにしては壁の薄いアパートに住んでるのは謎)
でも、いやこいつ贅沢な悩みだな!とはならない演出。
ある程度人生経験ある人なら誰しもがいくらかは共感できるんじゃないかな、、、こういう板挟みとか、迷子の感覚って。
全部が全部悪なわけではないと思うけど、それでも自分に対する仕事の期待とか圧とか、その対象である親友までも、煩わしく思えてしまう。
その全てが障害物とか、敵とか、疎ましいものみたいに思えてきて、迷子になりながら自分も周りも傷つけてる。それに気づけていない、、、

そんな中で、お隣さんから聞こえてくる音とか、鼻歌とか、コーヒーミルを回す音だけがセーブゾーンというか、そういった懊悩からから解放される許された時間だったのかなって、、、

普通の恋愛ものだったらここでお隣さんと出会って人生が変わったり開けたりするところ、結局人生を変えるのは茜ちゃんって言う別の女の子。
めっちゃいい感じ!
めっちゃいい感じで、完全なヒロインムーブしているのに、絶対くっつかなさそうな、本当に恋愛とかなくて親友になれたなっていう、サトルとアカネの関係性めちゃくちゃ好き

後半で七緒さんと同級生だって判明するシーンは、ネタバレくらってたけどそれでもよかった
ネタバレなしに見たかったなー!!笑

七緒さんのこと、学生時代から好きだったのかな、完全に向こうには認識されてなさそうだし
片想いだったんだろうけど
ずっと想い続けてて、、、

サトルが好きだったのは、七緒さん
お隣さんは、惹かれるものがあったけど、多分恋まではいってないよなぁという勝手な解釈
支えられてたし、支えたいと思って鼻歌を歌った
そこで、心を通じ合わせることもできた。

でも、最後の最後で
お隣さんの正体を知る
瞬間のサトルの心理よ!!!想像して!!

この、七緒さんに対して一途だし
最終的にどうあがいても七緒さんに(正体を知らなかったとしても)惹かれていたって言う
まさに野暮じゃない形で運命の人を示してる奥ゆかしい演出!!!!
この構成めちゃくちゃ神ってるなとしか
尋常じゃない、、、

シンゴとの確執、、、なんてなかったんだよね。最初から。敵はいつでも自分だった。自分が自分の可能性を勝手に線引いて殺してたし、言い訳してたし、八つ当たりしてたし、人のせいにしてた

それが間違ってるって、あかねちゃんのおかげで思い出せた。
人間ドラマももちろん色濃いけど、サトルくんサイドはサトルくんのせいちょうの物語でもあってすごくぎっしりと詰まってた


一方七緒さんサイドはというと、
濃厚でいかにも物語的なサトルサイドに比べて、確かに「花屋」「フランス留学?」は華やかだけど、本質的にはもっともっと平民に近いリアルな感じがしました。
夢に向かって努力する、まっすぐがんばる
そのかでも嬉しかったり悲しかったりすることがある、、、人生じゃん。

夢のために頑張る為に、テキパキと働くために、花を犠牲にする、、、
犠牲にすることを当たり前にしてる、初心を忘れている、、、そんな描写も痛烈。花を拾う新人くんとの対比。この表現なんだろうって思ったけど、安心安定でちゃんとあとにきいてくるし、、、

頑張る誰か、そして頑張りすぎて疲弊してる誰か。その代理キャラのようにも感じました。

とはいえしかし、
人生悲喜交交を表現するために導入された岡田2が本当にやばすぎた。氷室さん?
まず、花屋の人に花を見繕ってもらって、それをそのままその人に渡すって、嬉しくないよね。おかしいよね!?いや、嬉しいと思うし、価値はあるものだし、ダメではないと思うけど、それは全くロマンチックじゃないと言うか、、、
私だったら、私の専門にして売ってるもの目の前で買って渡されたらちょっと嫌ですよ。結構センスないと思うし、痛い、、、というか、本当に、いいと思える部分がないくらいだったんですけど、、、
あんま言っちゃダメだと思うけどストーカーっぽいし
コンビニ店員が恋とかはダメじゃないと思う!お客さんに恋しちゃうのも、いいと思うけど、そこからの距離の詰め方えぐいし
なんかきもいなー申し訳ないけど

って思ったら本気でやばいキャラだった
氷室さん本当に嫌い、、、
小説のネタはないわ
まじ才能ないから早くやめれ!!!!って激おこ
バイトの子の話は対比だったのかな?
明らかに怪しいけど、入院中の女の子っていうのは、、(てかなんだったの?美人局?)
実際は渦中にいると騙されてるなんて思いもよらないよっていう、対比なのかな
よくわからんけどさ

ふとしたとき、コーヒーミルの音が許された時間になってるのすごくいい
あと、風を集めて、二人で歌って心が通じ合うシーンとてもいい

パーティー会場で会うシーンはどう言う心情なんだろう
全く覚えてなかったけど、なんかイケメンになってる同級生の視線を感じて気になってる感じかな?
予感めいたものはあったのかも、、、
鍵束の音に反応してたし
まさかとは想いつつ深層心理では、、、何かあったのかな

そこから、ラスト
もう引っ越しちゃったんだ??
もう会わない?
結局隣人同士って気づかないまま?
お互い惹かれあってるって気づかないまま!?
って、地元に帰ったあたりからずーーーっと焦らされてて
焦らされまくって

そこで写真プレゼントする森本レオさんほんとぅにGJ
MVP者の活躍でしょ
ずっと気になってたカフェの写真
心の拠り所の一つ
それを撮った人がまさかのお隣さん=心の拠り所の一つ
そしてそのお隣さんが、、、、


野島くんだった、、、、、、


って分かったシーンでもう
神映画確定
神演出にも程があるでしょ

しかしながら、本当に、ここで走っていく七緒さんすごく好き
これぞ運命の赤い糸だよ!!!
あーーーやっと!!
やっとこのまちに待ってた瞬間!!!!!!!!
うおおおしあわせになれぇ!!!!!

と思ったらまさかの不在!!!!!!
シンゴとの友情も熱かったけど!二人でまた始まりの場所で写真撮る演出は好きだけど!!!
ヒロインとの運命の瞬間が!!しんごのせいで!!!!!!!!


とか思ってたら




まさかの

写真を見て数時間待機、、、、、、
七緒さん、、、、、、


手放しに手に入る運命がないのなら、自分で手を伸ばして運命を掴んじゃう
そんな強い意志と成長を感じました


扉を開けるまでの間
焦らし方
本当に完璧

そして扉を開けてから

泣くのかと思った!!
泣いてもよかった

でも違う、まさかのくしゃみ
なんで!?
もう




最高ですよ、、、、

演出神か

主人公とヒロインの人生が交わるの
最後の瞬間なの


でも、実際それまでに、お隣同士の
音によって、通じ合ってた

でもそれだけじゃ恋する理由はちょっと弱いかも
だから、同級生のパーティーの演出があるのかな
でも、それが直接的すぎずに、野暮になってない

ささやかな、ささやかな積み重ね
ささやかなひっかかり
ささやかな、他愛無い日常の音

それを通して二人が惹かれあっていることの説得力が
この映画全部を通して完璧にか不足なく表現できている
本当に素晴らしい映画、、、

しかし、最後の最後だからこそ
いやでもこの後のことが気になるじゃん!!、二人の絡みが!!!!!!!!

でも、これで10年後、、、とか、数年後、、、とかテロップが出て追加シーンとかあったらべったべただし野暮だぞ!????でも見たい!!!

って言うすごいわがままな欲望を感じていたんですが

まさかの
完璧な回答




EDで、(おそらく帰国後であろう)二人のデートの他愛無い会話の音声だけが、聞こえるんですよね

どこまでも日常っぽい感じで
でも、この会話が、本当に最高で
本当に好き

もう聞いてくださいとしか言いようがない
本当に、「おと」だけって演出がまたいいし
本当に野暮じゃない

おとなり、映画内に費やされてる全ての要素が野暮でなく、きちんと働いてる

書ききれない!
シンゴ、モデルとしてのシンゴは普通に出てくるけど、人間としてのシンゴは全く出てこなくて、顔も出てこない、考えてることもわからない、、、どころか、最後訪ねてくるシーンまで生きてるのかもわからないし、本当にいるのかもわからないし、って徹底されてる演出がすごくよかった。本当に友達なの?恋人なの?ってくらい連絡取れないし
だからこそ、最後サトルとシンゴの親友二人のシーンが映えてると思うんだけどさ!

あとは市川実日子も好きだし!
花屋の店長も好きだし!!
バイトくん?もしあわせになってね!まじで!もう!!!!

こんか綺麗にぴったりと完成された映画なかなかない。本当に名作
みんなに見てほしい


個人的にめっちゃ好きなのが
壁越しに「風を集めて」二人で歌う時、あれ、サトル、歌詞うろ覚え設定????って思ったのが
EDでまじで七緒さんに突っ込まれてるところ笑笑

本当に歌詞忘れてるんかいー!
でも途中からははっきり大きな声で自信ありげに歌える感じクソリアル笑笑

細かい演出ですが、こう言うのたまらなく好きで

文字通り、最後の最後まで本当中楽しめた。
のどかだけど可愛らしくて、軽やかだけどふわふわしてる、日常なんだけど、おとぎ話みたいな非日常でもある
そんなBGMも本当にいい仕事してたと思う

大好きな映画になりました!
かつきよ

かつきよ