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斬るのkoyamaxのレビュー・感想・評価

斬る(1962年製作の映画)
4.5
オープニングからわりとスタイリッシュなカットではじまる三隅研次と市川雷蔵の「剣三部作」の一作目。眠狂四郎の2作目と3作目の間に撮っています。(訂正、狂四郎や忍びの者よりも前でした)

雷蔵が複雑な出自に苦悩する話です。
同じ主演作の眠狂四郎に比べるとひたすらにストイックな話です。
この男に関わった女たちの悲運もあり
身の回りにいる大切な人も次々にいなくなる。自分を助けてくれた人もいなくなる。

そして、ひたすら悲惨で、流す涙すらない。そんな話です。
救いが無いんですが、救いが無さすぎて救われる方もいると思います。

オープニングから藤村志保の狂気に圧倒されます。
最近、観る映画の流れで三隅研次作品をみてますけどね、一番有名な「子連れ狼」はかなり吹っ切れていますが、派手な事を売りにしているわけではないようですね。
この方の演出は本来その逆で、鬱屈した思いをどこに爆発させるか。
その死に場所を探している感じがストイックに感じるところがあります。
そしてその爆発するポイントは一瞬にしかない。。
想像力を喚起させる演出がずっと気になる監督です。
そう思うと細かいカット割りもケレン味よりも、ハッキリ見せる建設的な感じのために積まれている気がします。いや、にわか目線でしかないのですが。。

市川雷蔵は作品によって坊やみたいな子から、恐ろしい形相まで、顔つきが良くかわりますね。

この劇中内でも、最初にいた快活な雷蔵はどこいったんだ?というくらい悲劇的な展開と共にどんどん顔つきが変貌して行きます。

この作品では三人の女が登場します。
一人目は藤村志保。
もう一人は雷蔵の妹役の方、現代のアイドル業界でも通用する美女だとおもいました。
最後は行きずりでであった姉弟。またその女が異常にエロ美しい。
登場シーンは短いのですが、この方の描き方がですね、脳裏に焼き付くくらい印象に残ります。この一連の演出を観てやはり三隅研次は変態だと思いました(褒)

ラストの決闘の色合いは素晴らしいですね。やたら天気いいんですけどね。
青いのに黒い。ちょっと自分でもなにいってるかわかりませんが、、、その中で黒い理由も青い理由も、敵と対峙する緊張感ともに、心に去来する空虚感ともつながり、この作品を象徴する色として残ります。
ここでは、それなりの殺陣とスプラッターが存在するのですが、それを見せる距離感もまさに美学を感じます。

この作品ですっきりなにかが終る事を期待してはいけないですが、そういう生き方もあると感じて胸に沁みます。

この作品が70分て恐ろしい濃度ですね。
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