ヴェルヴェっちょ

トーク・トゥ・ハーのヴェルヴェっちょのレビュー・感想・評価

トーク・トゥ・ハー(2002年製作の映画)
3.8
スペインの名匠ペドロ・アルモドバル監督による異色作。
静かな映画、と思いきや、うかうかしてると置いてかれる。

病室のベッドで昏睡状態にあるバレエダンサーのアリシアは、看護師のベニグノにより4年間看病されてきた。
バレエ・スタジオで踊るアリシアの美しさに魅せられたベニグノは、彼女が交通事故に遭って以来、自ら献身的な看護を志願したのだった。
一方、女闘牛士リディアも、競技中の事故によって昏睡状態で入院していた。
彼女の恋人のマルコは絶望に陥っていたが、ベニグノと互いの境遇を語り合ううち、二人に厚い友情が生まれていく…。

目を覚まさない想い人・恋人への献身的な愛…を描くだけではなかった。後半は怒濤の展開に驚嘆の連続。

ネタバレになるので内容は書けませんが、看護師のベニグノが「変な奴」になりさがっているのが残念ではありました。 彼の葛藤や内省を追えば、終始静かではあるけれど、また変わった映画になっていたと思うし、その方が自分としても好み。

ただ、実際は彼の奇天烈な言動を追う描写となっている。それはそれで一種のエキゾチシズムを味わうことができるのだけど、行動だけ見ると変人なのである、ベニグノは。表層だけで「変な奴」と受け止められてしまうとしたら、何とも惜しいと思ってしまう。

いかにも情熱的な、赤・黄といった原色がふんだんに使われた画は、ハリウッド映画とは一線を画す魅力があります。
怒濤の展開が、見慣れない色彩と相俟って、非日常の感興を覚えさせる一作。