千年女優

母なる証明の千年女優のレビュー・感想・評価

母なる証明(2009年製作の映画)
4.0
母ひとり子ひとりで貧しい生活を強いられながらも、知的障害のある息子のトジュンへ惜しみない愛情を注ぐ母親。そんな親の想いとは裏腹に女子学生殺人事件の被疑者として息子を逮捕された彼女が、親身に相談に乗らぬ警察や弁護士に見切りをつけて自ら愛する息子を守るために事件の捜査へ乗り出す様を描いたポン・ジュノ監督作品です。

儒教に強い影響を受ける韓国の母親像を描いたミステリー色強いヒューマンドラマとポン・ジュノらしい多角的な作品で、一説では海よりも深いとされる母の愛が暴走し狂気の領域に至るまでの一部始終を韓国の国民的女優キム・ヘジャ主演で描き、作中で発覚する息子の知られざる姿に幾度と我を忘れて壊れゆく母親を見事に体現しています。

様々な解釈を可能としますが、トジュンの立場に立った時、一見すると「親の心子知らず」な彼による「依存」を強要される事に対する壮大な復讐劇、ひいては韓国の母親像という価値観に向けたアンチテーゼとも捉えうる深みを持っています。それを受けてのラストの母親の舞いは圧巻で、ポン・ジュノらしい複雑な余韻に包まれる一作です。
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