ポン・ジュノ作品4作目。
この監督の作品の中では、意外とこの作品好きっていう人が多い印象。
自分も過去に映画館でバイトしてた時に確か上映されていて、
今ほど映画に詳しくなくてポン・ジュノはもちろん韓国映画もあまり知らず、
でもそれなりに動員は入っていたかな。
だからずっと気にはなっていたけど、上映時間も若干長いし、
で先に同じウォンビンが出てる「アジョシ」を観ちゃって、
より観る機会が遠のいた。
ここ最近でポン・ジュノ作品を観ることが増えたので、
その中でも一番好きだったのは「殺人の追憶」だったが、
それを超えてきた。
でもこうなると、やはりサスペンスが好きなのだろうか。
もしくはポン・ジュノの描くサスペンスが面白いのか。
知的障害を持つ息子が殺人の容疑をかけられ、
そんなことができるわけないと自分の人生をかけて息子の無実を晴らそうと
奔走する母の姿。
途中あまりにも彼女の捜査に熱が入りすぎて(まぁそりゃ息子が疑われてんだから当然か)、
2時間サスペンスだったっけ?と思ったほどに、
なりふり構わない行動に自然と「もっとやれ」とエールを送る。
行き詰ってきた中で、その時にかつて息子に絶交しろと言っていた悪友に、
藁にもすがる思いで協力を頼む姿にも応援したくなったし、
その悪友にも「お願い!」と心で思ってしまった。
もちろん単なるサスペンスにならないのがこの映画のすごいところ。
母と息子の過去の出来事も見せつつ、
真相の核心にいよいよ迫った時に知らされる驚愕の事実。
母の応援団というか親衛隊としてずっと観てきたが、
全員が口を開けて唖然とする瞬間があるのでそれだけでも体験してほしい。
「確かに、その可能性は心のどこかに感じていたけど、
それだけはずっと隠してきたのに、うそでしょ?」と。
映画の始まりが不意の母ダンスだった時から、
この映画、タダじゃ終わらないとは思っていたけど、
本当にそうだとは夢にも思わないし、あのダンスがそうつながるのね、と。
人の心に潜む闇を、えぐるようにして白日のもとに晒し、
そこで起こる人間同士の化学反応を描かせたらやっぱりすごい。
悲しい話じゃないし、そんな名称のついた感情で表現できる作品じゃない。
なんなんだろう、すごい。やばい。
観終わった後、そんな語彙力ゼロの感想が頭を巡る。
とにかく面白かった。