森田芳光特集第2作。
森田芳光監督の本格的なデビュー作でもあり、映画を作るために資金を作り事務所まで建て、家まで担保にするなどリスクを背負って作った逸話がある。
東京の下町を舞台にどこか抜けてる売れない若手の落語家志ん魚が、いろいろな経験をした結果、挫折し、そして先輩の昇進する姿を見て、人生に真剣に考えようとして物語が終わる。
この映画は、森田映画らしいかみ合わない会話、訳の分からないカットや編集も含めながら、荒唐無稽な笑いありの話しながらも、最後には志ん魚の成長の決意とともに尾藤イサオのしーゆーアゲイン雰囲気で切なくも終わる。
全てのキャラクターが生き生きとしていて、ポップで朗らかでありながら所々に毒のある演出があるなど、見ていて飽きさせず観客を笑わせることのできるこの映画はコメディとしても完成度は高い。
それでいて古さを感じないのもこの映画のすごいところ。78~80年という高度経済成長からバブルへと変わる日本で一番上昇意識があった時期であったからこそ、ここまでポップでエネルギッシュながらも、最後は切なくも希望のある終わりをしているのは、非常に素晴らしいと思った。
新文芸坐で見た際も、初日で一番拍手が大きかったのはこの回であったな。
宇多丸さんの話でも、当時30で映画だけで碌な職歴もなく不安を抱きさらに巨大な仕事を背負いながらも、前を向いてアイデアを出すだけ出して映画を作っていた森田監督の心情をそのまま投影したのが志ん魚のキャラクターだと思うと、さらに奥の深い映画であると頷けた。
自分も80年代は好きな方なので、この作品を見れて本当に良かったと思う。
所々の外しの演技が計算づくられたように成すギャグ描写、ポップでお洒落な絵作りは日本一である。
あと秋吉久美子はえろい。