netfilms

スターシップ・トゥルーパーズのnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.9
 TVモニターに映る戦争賛美のコマーシャル、民主主義の崩壊した近未来の地球、地球連邦では軍部を中心とした「ユートピア社会」が築かれていた。連邦政府の支配の下、一般民は市民権を得るためには軍隊に志願し、兵役につくことが必要とされていた。ブエノスアイレスのハイスクールを卒業目前のジョニー・リコ(キャスパー・ヴァン・ディーン)は、授業中に落書きしていることを担任のラズチャック(マイケル・アイアンサイド)にたしなめられる。恋人のカルメン・イバネス(デニース・リチャーズ)へタブレットに書いたキスの絵を送る。そんな彼の背中をもう1人の恋のライバルであるディジー(ディナ・メイヤー)は見つめていた。宇宙海軍のパイロットを目指す、俊才にして親友のカール(ニール・パトリック・ハリス)との昼休み、エスパーの能力を持つ彼との透視ゲーム。アメフト部のエースであるジョニーは、敵チームの最大のライヴァルであるザンダー(パトリック・マルドーン)と死闘を繰り広げる。卒業式の日、カルメンやカールと共に軍に志願した男は、最も苛酷な機動歩兵部隊に配属され、鬼教官ズィム軍曹(クランシー・ブラウン)の下、彼に恋する同級生のディジー(ディナ・メイヤー)と猛訓練の日々を経て優れた兵士に成長する。分隊長に任命された彼だが、ある日、実弾訓練で仲間のひとりを死なせてしまう。

 ロバート・F・ハインラインのSF小説『宇宙の戦士』を原作とする物語は、80年代前半より何度も映画化が取り沙汰されたが、CG/VFX技術の拙さから何度も頓挫した。1959年という冷戦時代の真っ直中、ベトナムの情勢が戦争へ向けて大きく傾いていた時期に刊行された原作小説は、軍国主義の復権、暴力を肯定しているとして賛否両論が巻き起こった。戦争賛美の陳腐なコマーシャル、ナチスを模した軍隊のイメージ、陰惨極まるむち打ちの虐待など、ヴァーホーヴァンの描き方はファシズム社会への冷笑が垣間見える。フィル・ティペットによるクリーチャーの造形は数百体にのぼり細かく描かれ、ウォリアー、ホッパー、プラズマ、タンカー、ブレイン、チャリオットと多岐に及ぶ。中でもピンクがかかった体色とノズルのような触覚を持つブレイン・バグの造形は何とも強烈で印象に残る。プラズマ砲とウォリアー・バグの前に、地球軍は一瞬にして10万人の戦死者を出し、攻撃は大失敗。ラズチャック愚連隊からジョニー愚連隊へ、メンターの死で人間の命の尊さ・責任を知った主人公は地球連邦軍を率い大量のアラクニドバグズたちに戦争を挑む。身体を切断され、頭をかち割られ、脳みそを吸い取られる人間たちの最期はあまりにも悲惨で見るに耐えないものだが、ナチスドイツの支配下にあったオランダで幼少期を過ごしたヴァーホーヴェン流のシニカルな反戦映画に他ならない。
netfilms

netfilms