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長い散歩のRyuのレビュー・感想・評価

長い散歩(2006年製作の映画)
3.7
高校の校長も勤め上げ、定年退職した安田松太郎。厳格な性格故に家庭は上手くいかず、妻には先立たれて、娘には憎まれていた。松太郎は引越し先のアパートで母親に虐待されている女の子と出会う。見兼ねた松太郎は女の子を連れ出し、家族との思い出の地を目指して旅に出る。

第30回モントリオール世界映画祭にてグランプリを獲得した作品です。監督は出演もしてる奥田瑛二が務め、脚本には妻 安藤和津、長女 安藤モモ子、次女 安藤サクラ(チョイ役で出演)も参加しており、3人合わせた“桃山さくら”としてクレジットされています。
家庭を上手く築けなかったおじいさんと虐待を受けている少女によるロードムービー。この旅は逃避行であるのと同時に松太郎の家族への贖罪の旅でもあります。
高岡早紀の毒親っぷりが凄まじくて、序盤の旅に出るまでは中々キツかったですね。今作は2006年の作品ですが、児童虐待という問題は現代でも留まるところを知りません。
プロットとしては是枝裕和の作品や「八日目の蝉」とかに似てますかね。本当の家族ではない者たちの繋がりはやはり心安らぐものがありますね。しかしながら、それはつかの間のことです。その後の彼らに幸せが待っているとは思えないのが辛い。
途中に出てくる松田翔太も中々いいスパイスだったかな と思いました。現実に合わずに悩む青年を好演しております。彼の存在が果たして本当に必要だったのかどうかは疑問ですが、思うところはありましたね。
緒形拳の落ち着いた演技はさすがですが、子役 杉浦花菜の演技もそれに勝るとも劣らないくらい素晴らしかったです。虐待を受けている という繊細で難しい役どころを見事に演じきっていました。
落ち着いた雰囲気の作品ではありますが、問題提起もしっかりとされているし、2人の旅路の微かな幸せなどのドラマチックな要素もあって、心に響くものがある作品でした。これをガチの家族が一緒に作るなんて、奥田ファミリーの精神力には感服致します。
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