みかんぼうや

遊星からの物体Xのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
3.8
【リアル「寄生獣」!?生命体の圧倒的なグロさに、強烈な気持ち悪さを感じていたのに、気づけばその造形に芸術的美しさを感じる脳内ショートSF映画】

SFはそこまで積極的には観ない(好きな作品も宇宙人系ではなく「2001年宇宙の旅」や「インターステラー」など人間ドラマ?物)、ホラーに至っては苦手なのでほぼ観ない、という私ですが、フィルマのレビュアーさんの本作レビューを読んで、この作品の存在が気になり、9月末配信終了ということで駆け込みで視聴。

これは・・・実写版「寄生獣」!?「寄生獣」は本作からインスピレーションを受けている、というよりも寄生され人間の中に溶け込んでいる様子、もっというと犬の顔が割れて生命体の顔が出てきたり、人の体から飛び出る崩れた顔や触手などの造形そのものが結構“そのまんま”という思うほどでした。ただ、これはあくまでも基礎的な設定で、細かい設定やストーリーは全く違いますし、個人的には「寄生獣」のほうがより“自然讃歌”や“人間賛歌”を感じるコンセプチュアルな内容だとは思いますが。

ストーリー的には、実はシンプルで分かりやすく、味方の中に敵が隠れて紛れ込んでいる構造も、正直なところそれほど特殊性を感じる設定ではないです。が、本作についてはとにかくその映像、というよりも生命体の造形が凄くて、それだけで観る価値ありです(笑)。というのも、本作、CGが使われる前の時代・・・つまり、この奇妙でグロテスクな造形とその動き、そして生命体の焼き払いをCG無しで作り込んでいるわけですから。製作陣の情熱と徹底した拘りを想像するだけで興奮しちゃいます。

そんなわけで、最初は「うわ!気持ちわる!」と思い続けていた生命体たちやその内臓たちが、見れば見るほどに、造形物としての芸術性に美しさすら感じ始めてしまい、いつしか「この気持ち悪いの、もっと見たい!もっと見たい!」という異常な感覚が生まれ、脳みそがイカれショートさせられたのが、本作の一番凄いところです(笑)。

この造形の気持ち悪さと世界観が快感になる感じは、大好きなリンチの「イレイザー・ヘッド」のそれを思い出しました。

実は一番怖いのは、生命体ではなく人間の猜疑心なのではないか・・・みたいなメッセージ性もあるのでしょうが、そういうのを抜きに、この異様な映像に十分魅了されました。

基本的にホラーは苦手ですが、「怖くて観てられない!」という感じは一切なく、前述の通り、キモさも美しさ!?に変わり、あまり怖さやホラー感はなかったです。ビクッと驚かされたのも二回だけ。採血テストで声を出して飛び跳ねる血と、ラスト前の暗闇でのブレアの登場シーンくらいでしょうか。特に採血のほうは声にビビった!

最近はずっとカサヴェテスマラソンを中心に人間ドラマばかり観ていたので、たまには思いっきり振った作品も良いですね!(ちょっと振りすぎましたが・笑)
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