本の人

遊星からの物体Xの本の人のレビュー・感想・評価

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
4.9
この映画は、ホラー映画史において今なお不気味な雰囲気を発し、『寄生獣』等のエイリアン物、寄生生物物に多大な影響を与えている作品でありながら、実は見たことがないという方もいるのではないだろうか。そんな方は、この映画がいかに古いと言えども観てみてほしい。本作と『エイリアン』『プレデター』の3本を未だ観たことがない方は人生を浪費している。
みなさんの思い描くホラー映画とはなんだろうか。幽霊物、ゾンビ物、狂人物、異形の生物物、サメ映画等々多数挙げられるが、「寄生生物が人間に紛れて侵略してくる」などという作品をご覧になったことはないだろうか。その原点はこの映画である。
この映画では、正体不明の生物が、次々と人間を取り込んでいき、人間側からしたら誰が敵で誰が味方かわからない上に、外は南極という、事実上人間が棺桶に入った状態で物語が進んでいく。その上生物(the thing)を殺す方法は燃やすしかなく、血液一滴にでも触れようものなら、人間は容易く取り込まれてしまう。ここにサスペンスとホラーが生まれる。すなわち、誰を信用し、誰を信用しないのか、この如何によって、もしかしたら人間を殺してしまうかもしれないのだ。そして人間がまごついている間に、生物は侵略を進めていく。だから早く手を打たねばならないがしかし…………と観賞者にも鬼気迫る状況がひしひしと伝わってくるのだ。
そしてこの映画は最後まで観賞者に圧力をかけてくる。最終決戦ぎみの戦いを終え、基地は燃え、雪が降る中、人間は果たして勝利したのか?この不気味さが、今なおこの映画が語り続けられる一番の要素なのだ。だから私はみなさんにこの映画を観て、恐怖し、語り継いでいってもらいたい。
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