ノラネコの呑んで観るシネマ

遊星からの物体Xのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
4.8
デジタルリマスター版。
SFホラーの金字塔。
娯楽映画は歳月の経過で陳腐化してしまうものと、あまり古びないものがあるが、本作は間違いなく後者。
雪と氷に閉ざされた南極基地で展開する、誰が本当の人間だか分からないという疑心暗鬼の心理劇は、36年が経った今でも十分に面白い。
公開当時は真逆の内容の「E.T.」が話題を独占していて、少し先に公開された本作は小さめの箱での地味な興行だったが、私を含めたSF・ホラー系の映画マニアの度肝を抜いたのは、むしろこちらだ。
ロブ・ボッティンの手がけた“物体”は、本当に誰も見たことがない表現だった。
映像トレンドが一巡したのか、グチャグチャドロドロのメカニカルモンスターは今見るとかえって新鮮。
「こいつは何の冗談だ」とか最高だろ。
ボッティンはプリプロから演出的な領域にも相当に口を出し、カーペンターも受け入れたそうだが、その努力は確実に結実している。
カーペンターのサスペンスのツボを抑えた演出も、たぶんこの頃が絶頂期。
モリコーネの単調で不気味な音楽も、はっきり耳に残っていた。
ちなみに何かと評判の悪い前日譚、「遊星からの物体X ファーストコンタクト」も私は全然嫌いじゃないよ。