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遊星からの物体Xの小のレビュー・感想・評価

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
4.0
極寒の南極観測基地という逃げ場のない舞台。氷の世界で眠っていた物体Xがあるきっかけで目を覚ます。物体Xは接触した生物に同化する能力を持っていて、このままではおよそ2万7000時間で地球上の全人類が同化されることがわかるが、通信及び移動手段を絶たれるという、そうでなくっちゃの状況。観測隊員、人類の行方はいかに…というお話。

物体Xの造形がナカナカで、ぎょっとする。そしてあのシーンはまさかあんな表現をしてくるとは全く予想していなかったから、かなりビックリした。あと、冒頭のシベリアンハスキーがなかなかの役者。

物体Xが同化する方法は、相手に一滴でも体液を送り込むか、相手を吸収するのどちらか。よりドラマチックなのは前者の方。推理小説でよくあるように、密室的空間で殺人犯が誰かわからずお互いに疑心暗鬼になってくるのと同じ構造だけれど、本作の場合、疑いの目は自分自身にも向けられるというのがミソ。

真相が明らかにならないラストシーン。隊員たちはどうなるのか、人類がどうなるのかは観る者にゆだねられる。というような含蓄のある映画とはつゆ知らず、弛緩した気持ちで観てしまった(それでも十分面白いと思うけど)。

ジョン・カーペンター監督は<少年時代に父から「いつでも疑ってかからなければだめだ。いまわたしが言っていることもだぞ」と言われた>そうで、「疑う」ということが監督の世界観のようだ。

本作が製作された1982年はエイズが命名された年。知識が不十分な当時、エイズは物体Xのように恐れられていたのかもしれない。隣人を疑い、自分自身さえも疑う人類の行方は…。

なかなか怖いことを考える監督だけど、荒唐無稽と切って捨てられないどころか、何か引き付けて離さない魅力がある作品ですな。

引用元はこちら
(http://indietokyo.com/?event_blog=%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E9%80%A3%E7%B6%9A%E3%83%AC%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%80%80%E7%AC%AC2%E5%BC%BE%E3%80%8E%E9%81%8A%E6%98%9F)

●物語:4.0
・弛緩していない状態でもう一度、観て考えたくなる。

●その他:4.0
・物体X、怖いわー。夢に出てきそう。
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