Keitan

遊星からの物体XのKeitanのレビュー・感想・評価

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
4.9
『遊星からの“疑心暗鬼”と戦うお話』

20191022 117
ジョンカーペンター監督。カートラッセル主演。SFサスペンスホラーの名作(と僕は思う)後の名作コミック『寄生獣』などにも影響を与えた作品。

マイフェイバリット映画の一本。学生の頃に映画館で衝撃を受けて以来、金曜ロードショー、レンタルビデオ、セルVHS、DVD と何度も観てきた作品。フィルマークスを始めてベストムービーの一本としてオススメレビューを書こうと思い、その前にもう一度確認しようと見直して観たらやっぱり面白い。(とはいえ、個人の好みにも関わるのでグロテスク物がダメな方にはオススメしません)

今でこそSFは何でもかんでもCGで。という時代だが、あの時代のクリーチャーは全部手作りの特殊メイクだった。ブルーバックで撮影する現代とは違い、目の前にクリーチャーが存在して役者もそれを見ながら演技するし造作もかなり実在感があり、今見ても遜色なくリアルな迫力があると感じらたのは今回確認して良かったところ。

そんな懐古主義的なオジさんの趣味は置いておいて、この映画の面白さの本質はストーリー自体にこそあると思う。

通信が出来ない状態の南極基地というある種、密室の状況に、他の基地から逃げてきた一匹の犬によって事件は始まる。実は、その犬には宇宙から来た未知の生物が寄生していて次々と人に乗り移っていく。逃げられない状況で誰が見方で誰が敵か、お互い信じられない状況に追い詰められていく。パンデミック物とかゾンビ物に共通する展開だが、この映画の素晴らしいところは「伏線が全く説明されない怖さ」だと思う。もちろん多少のヒントはあり考察すれば説明できるところもあるが極力そんなシーンは省かれ、見ている観客も登場人物と同じく誰が「ソレ」なのか分からず、いつ飛び出して来てもおかしくない心境に引き込まれていく。

そしてラスト。残った二人が思わせぶりなセリフで会話を交わす。他のSFホラーのように助かって良かったねでは終わらない。見終わった後までモヤモヤとした恐怖が残る。そんな終わり方が何とも映画的に感じられ、僕がこの映画が好きなイチバンの理由だと思う。

きっとまた何年か後に、また見返す時が来るんだろうな。
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