※ネタバレ注意
80年代を代表するSFホラーの名作。
閉鎖空間での誰も信用できない疑心暗鬼が巻き起こす、未知の寄生生物との対峙。
寄生されたら宿主の意識も死ぬ、ターミネーターシリーズや寄生獣などと違い、
潜伏している時でも宿主の意識があり、
誰が同化されているか分からないだけでなく、自分自身が同化されているかすらも分からないのが本当に恐ろしい。
まるで今、拡大感染を拡げているコロナウイルスのように、自分の隣にいる人間が同化されてる可能性もあれば、自分自身が同化されてる可能性もある。
そして、それを防ぐ術が無い。
防ごうとすると、疑心暗鬼に陥り、仲間に亀裂が入ってしまうし、自分が同化されているとしても、いつ変貌するかまったく分からない。
誰が寄生されているか分からないことで、終始半端ない緊迫感が漂っていて、ストーリー展開に釘づけになってたし、
一瞬で世界を破滅に追いやることのできるパンデミックの恐怖をリアルに描いてました。
そして、そのリアルな恐怖をより重厚にしていたのが、グロ表現。
後の大作SFホラーのモデルになったとも言われている特撮でのグロ描写は、CGでは表現できないリアルさがあるし、
腹がパカっと開いて腕が飲み込まれる描写とか、首が引きちぎれて頭から触覚と足が生えた物体の描写には、脳裏に焼きついて忘れられないような凄まじいインパクトもある。
解剖をした時の、人間の顔らしき形が残っていたり、犬の足のようなものが残っていたり、といった、クリーチャーとしての造形は異様ながら興味深さもあって、魅力的。
犬の演技も素晴らしい。
人懐っこい序盤の姿からは想像できないほど異様な、おとなしく壁の1点を見つめる姿からの雰囲気と表情の変貌ぶりには、底知れない恐怖を感じました。
アカデミー賞動物部門があるなら、絶対受賞してると思うくらいの神演技。
緊迫感を上手く利用した映画的な恐怖の映し方は本当に秀逸で上手いし、物体Xの宿主が判明するまでのシークエンスが自然すぎて、先の展開がまったく予想できない。
再び観た時に、宿主が誰なのか分かっている観点で観ても、化け物が人間になりすましていることに恐怖を感じれるようなつくりになっているから、
いつ誰が寄生されていたのか、友達といくらでも討論や考察ができ、観れば観るほど恐ろしさが倍増する、素晴らしいホラー映画のお手本だと思います。
ラストは本当に最高。
最後に残った2人は果たして人間なのか?
観客に答えを委ねる粋なラストは、オシャレだし、純粋に好み。
自分を守るためには大切な人を傷つけなければいけないという残酷な運命に抗いながら奮闘する主人公たちを、
シンプルなストーリーながらも、カーペンターの卓越した演出力でリアルに描いた傑作SFスリラー。