MasaichiYaguchi

地獄の黙示録のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

地獄の黙示録(1979年製作の映画)
4.3
2001年に本作監督フランシス・フォード・コッポラによる「特別完全版」も観ているが、1980年公開のオリジナル・ヴァージョンを鑑賞するのは実に36年振り。
当時大学1年生だった私は、ドアーズの名曲「ジ・エンド」で幕開けするシーンから一気に作品世界に飲み込まれ、主人公ウィラード大尉と共に哨戒艇に乗り込み、ジャングルの奥へ、闇の中へ進んでいった記憶がある。
今回、デジタルリマスターされたオリジナルを観て、メッセージ性の強い「特別完全版」と比べ本作は、主人公の視点だけで描く、シンプルだけど贅肉が削ぎ落とされた内容になっていて、当時は文学的、哲学的で理解出来なかった終盤の展開を含めて、すとんと胸に落ちてきた。
映画も公開から36年も経つと、映像表現を含めて古臭くなったり、陳腐な部分が見えてきたりするものだが、この作品に関してはそういう所がまるで感じられない。
ベトナム戦争の狂気を寓意を込めて悪夢のようなエピソードの数々で浮き彫りにした作品だが、そういったシーンが映画的で現実離れしていると感じる人もいるかもしれない。
だが、絵空事のように思えるこれらのシーンも、「事実は小説より奇なり」の言葉にあるように、何でも有りの現代において有り得ることかもしれない。
特にキナ臭い国際情勢にある昨今、本作を公開する意義はあると思う。
「ジ・エンド」で始まるこの映画は、闇に飲み込まれるように幕を閉じるが、葛藤した末に行動し、「地獄の恐怖」から抜け出した主人公同様、本作は我々に終わりから始まる何か、教訓と言っても良いものを提示しているように思えてならない。